ノンアルコールビール5本、ゼロカロリーをうたうのは2本だけだった

スーパーの酒コーナーを素通りして、隣のノンアルコール飲料の棚を覗くことが増えた。以前は申し訳程度に2、3本並んでいただけの場所に、今はビール大手4社がそれぞれ看板商品を置いていて、缶のデザインも年々本物のビールに近づいている。 中身の話をすると、この棚は実はかなり不揃いだ。「ノンアルコールビール」とひとくくりにされているけれど、作り方も、カロリーや糖質の表示も、銘柄によってまったく違う。ゼロカロリー・糖質ゼロを両方うたえるのは実はごく一部で、残りは「低カロリー」止まりだったりする。 ここでは、コンビニやスーパーでよく見かける5本を並べる。アサヒ ドライゼロ、キリン グリーンズフリー、サントリー オールフリー、サッポロ プレミアムアルコールフリー、そして麦芽100%を掲げる龍馬1865。評価は、麦の風味・後味のキレ・カロリーと糖質の低さ・食事との相性・入手しやすさという5つの軸で整理した。 脱アルコールか、発酵させないか — 国産ノンアルビールの二つの作り方 2009年発売のキリンFREE。缶には「発酵させない」製法であることが明記されているPhoto: Mj-bird / CC BY-SA 3.0 「アルコール0.00%」と缶に書いてあっても、そこにたどり着く道筋は一つではない。大きく分けると二つの系統がある。 ひとつは、いったん本物に近いビールを仕込んでから、あとでアルコールだけを抜く方法だ。アサヒの「ブリューゼロ製法」がこちらにあたる。麦芽とホップでしっかり発酵させたビールを作り、そこから工程を経てアルコール分だけを取り除く。発酵でできた香りや旨み成分はある程度残るので、「いちばんビールに近い」と各社が競って謳いたがるのはこの系統のことが多い。 もうひとつは、そもそも酵母によるアルコール発酵をさせない方法だ。麦芽とホップを煮出した麦汁を作り、ホップ由来の苦味と香りはしっかり抽出しながら、酵母を加えて発酵させる工程そのものを省く。キリンが2009年に発売した「キリンFREE」は缶に「ORIGINAL YEAST-FREE PROCESS」と明記していて、この発酵させない系統の先駆けだった。サントリーのオールフリーも酵母を発酵させずに麦汁を仕込む方式で、サッポロが「酵母マイルド製法」と呼ぶ技術も考え方は近い。 どちらが優れているという話ではなく、トレードオフの向きが違うだけだ。発酵させてから抜く方法は、ビールらしい香りやコクを残しやすい代わりに、アルコールを完全にゼロまで抜き切る精度が要る。最初から発酵させない方法は0.00%を保証しやすい代わりに、発酵由来の複雑さをどう香りづけで補うかが腕の見せどころになる。この違いを知っておくと、5本を飲み比べたときの印象の差がかなり腑に落ちる。 アサヒ ドライゼロ、ブリューゼロ製法が生む「いちばんビールに近い」のどごし 缶に「0kcal / 糖質0g」と大きく入る。グラスに注ぐと泡立ちの細かさがよく分かるPhoto: Mr.ちゅらさん / CC BY-SA 3.0 / Amazonで見る → アサヒのドライゼロは、国内のノンアルコールビール市場でもっとも売れている銘柄だと言っていい。コンビニでもスーパーでも、ほぼ確実に棚の一等地に並んでいる。さきほどの分類でいえば「発酵させてから抜く」側の代表格で、ブリューゼロ製法という名前をはっきり前面に出している。 飲んでみてまず分かるのは、泡立ちの細かさとのどごしの強さだ。きちんと発酵させた工程を経ているぶん、口当たりが軽い飲料というよりビールの輪郭に近い。ドライという名前のとおり、甘さを強調せず、最後にすっと引いていく後味を狙っているのがよく分かる。食事と合わせたときに飲み疲れしにくいのは、この引き際の良さのおかげだと思う。 数字の面でも隙がない。カロリーは0kcal、糖質も0gで表示されていて、ゼロカロリー・糖質ゼロを両方うたえる数少ない1本だ。2025年には「泡ジョッキ缶」というギミックも加わり、蓋を開けた瞬間にきめ細かい泡が立ち上る仕掛けになった。見た目の満足感まで含めて、いちばん「ビールを飲んでいる感覚」に近づけてきた銘柄だと思う。 麦の風味:4 / 後味のキレ:5 / カロリー糖質:5 / 食事との相性:5 / 入手しやすさ:5 キリン グリーンズフリー、3種のホップと廃棄コーヒーチェリーで作るコク キリンのグリーンズフリーは、2026年1月に中身を見直し、4月から全国で切り替えが進んだ銘柄だ。看板は「3種ホップ香る爽やかさ」で、仕込みの工程を見直して麦芽の雑味を抑えたという。 今回のリニューアルでいちばん面白いのは、コーヒーチェリーの香料を使っている点だ。コーヒー豆を収穫したあとに廃棄されてしまう果肉の部分を活用した香料で、環境配慮と香りづけを両立させる狙いがあるらしい。実際に口に含むと、ホップの爽やかさの奥にうっすらコクのようなものが感じられて、単なる「薄いビール風味」で終わらない厚みがある。 ただし数字の面では、ドライゼロやオールフリーほど徹底していない。カロリーは100mlあたり約7kcal、糖質は約1.6gで、ゼロではなく低カロリー・低糖質という位置づけになる。とはいえ缶1本(350ml)あたりに換算してもカロリーは25kcal前後で、普段の食事に添える分には十分軽い部類だと思う。爽快さを前に出したい食中酒として見れば、キレよりも香りの余韻を楽しむタイプの1本だ。 麦の風味:3 / 後味のキレ:4 / カロリー糖質:3 / 食事との相性:3 / 入手しやすさ:4 サントリー オールフリー、世界初の0.00%を2026年にもう一段深くした 白を基調にしたパッケージに「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」の表示が並ぶPhoto: 森 康哲 / Yoshinori Mori / CC BY 3.0 / Amazonで見る → オールフリーは2010年8月、アルコール0.00%とカロリーゼロ、糖質ゼロを同時に実現した世界初のビールテイスト飲料として登場した銘柄だ。サントリーが400種類以上の処方を試したという逸話が残っていて、ノンアルコールビール市場をいまの形に押し上げた立役者のひとつだと思う。 ...

2026年10月11日 · 1 分 · 170 文字 · kingsworksub-jpg

トニックウォーター5本比較、割り材としての苦味を選ぶ

ジントニックをはじめとするスピリッツの割り材として欠かせないトニックウォーターは、単なる「甘い炭酸水」ではなく、植物由来の苦味成分であるキニーネや柑橘類の香りが絶妙に調合された奥深い飲み物です。ベースとなるジンやウォッカの個性を引き立てる名脇役として、どの銘柄を選ぶかによってカクテルの表情は劇的に変わります。今回は市場で広く手に入る代表的な5銘柄をピックアップし、それぞれの味わいの特徴と割り材としての適性を詳しく比較します。 フィーバーツリー プレミアムインディアントニック Amazonで見る → グラスに注がれるトニックウォーターの清涼感 Photo: Joseph Blosser / CC BY-SA 4.0 トニックウォーターの歴史と基本構造 トニックウォーターの起源は、かつてマラリア予防のために英兵が飲んでいたキニーネ入りの薬用飲料に遡ります。当時のキニーネは非常に苦味が強くそのままでは到底飲めなかったため、砂糖やライム、そしてジンを加えて飲みやすくしたのがジントニックの始まりだと言われています。現代のトニックウォーターにおいても、この「キニーネ由来の独特な苦味」と「糖分による甘さ」、そして「炭酸の爽快感」の3要素が味わいを決める核心となっています。 市販されている製品によって、天然のキニーネや植物エキスを使用しているものもあれば、人工的なフレーバーですっきりとまとめているものもあり、その個性は実にさまざまです。特にクラフトジンブーム以降、スピリッツ側のボタニカルが非常に複雑化しているため、割り材となるトニックウォーター側にも高い品質と繊細なバランスが求められるようになっています。ここからは、代表的な5つの銘柄を取り上げ、それぞれの個性と最適な楽しみ方を深掘りしていきます。 1. フィーバーツリー プレミアムインディアントニック — 自然な苦味と贅沢な香り プレミアム・ミキサーのパイオニアとして世界中のバーテンダーから絶大な支持を集めているフィーバーツリー。人工甘味料や合成香料を一切使用せず、コンゴ民主共和国産の天然キニーネや、世界各地から厳選された植物由来の成分を贅沢にブレンドして作られています。 グラスに注いだ瞬間から立ち上るシトラスの爽やかな香りと、上品で奥行きのある苦味が最大の特徴です。甘さが非常にクリーンで後を引かないため、プレミアムジンが持つボタニカルの香りを少しも邪魔することなく、むしろ何倍にも引き立ててくれます。価格帯は一般的なスーパーなどで手に入る製品に比べてやや高めではありますが、妥協のない本格的なカクテルを楽しみたいときには間違いなくファーストチョイスとなる一本です。素材の良さがダイレクトに伝わるため、シンプルなジントニックほどその真価を発揮します。 2. シュウェップス トニックウォーター — 王道のバランスと爽快なキレ 世界初の炭酸飲料ブランドとして歴史を持つシュウェップス。そのトニックウォーターは、柑橘系のフレーバーと心地よい苦味、そして程よい甘さが黄金比率でまとまった、まさに王道の味わいを体現しています。 シュウェップス トニックウォーター Amazonで見る → 特定の主張が強すぎないため、どんなスピリッツと合わせても綺麗に調和する汎用性の高さが魅力です。炭酸の泡立ちもきめ細かく、口当たりが非常にスムーズでありながら、飲み終わった後にはスッとした爽快なキレが残ります。日常的な家飲みにおいて、常にストックしておきたい安心感のある定番銘柄であり、初心者からプロまで幅広く愛用されています。 3. ウィルキンソン トニック — 力強い炭酸とキレのあるドライ感 強炭酸水で圧倒的な知名度を誇るウィルキンソンブランドが展開するトニックウォーター。最大の特徴は、何といっても喉を直撃するような圧倒的な炭酸の強さと、甘さを控えめに抑えたドライな飲み口にあります。 ウィルキンソン トニック Amazonで見る → 一般的なトニックウォーターの甘さが少し苦手という人でも、このウィルキンソンであれば心地よい苦味と強烈な炭酸の相乗効果で、非常にすっきりと飲み干すことができます。ジンと合わせた際にアルコールの角をしっかりと立ち上がらせつつ、全体の輪郭をシャープに引き締めてくれるため、辛口なカクテルを好む層から高い人気を集めています。 4. カナダドライ トニックウォーター — 飲みやすさと親しみやすさの両立 ジンジャーエールなどで馴染み深いカナダドライが送るトニックウォーターは、苦味がマイルドで全体の甘さのバランスが非常に良く、誰にとっても親しみやすい味わいに仕上げられています。 カナダドライ トニックウォーター Amazonで見る → キニーネ特有の薬草的な苦味が控えめであるため、苦味の強いお酒が苦手な方でも抵抗なく楽しむことができます。また、単体でそのまま飲んでも美味しく、柑橘系のスライスを浮かべるだけで手軽におしゃれなノンアルコール・カクテル(モクテル)が作れる点も大きなメリットです。入手のしやすさと手頃な価格も含めて、非常にバランスの取れた選択肢です。 5. 神戸居留地 トニックウォーター — 高コスパで日常使いに最適な一本 国内の飲料メーカーである富永貿易が展開する神戸居留地ブランド。コストパフォーマンスの高さに定評があり、トニックウォーターでありながら圧倒的な低価格を実現している点が最大の強みです。 神戸居留地 トニックウォーター Amazonで見る → 味わいは非常にシンプルでストレート。高級銘柄のような複雑なボタニカルの風味こそ控えめですが、しっかりとトニックとしての苦味と甘さが備わっており、日常的な晩酌の割り材として気兼ねなくガンガン使うことができます。「消費量が多いのでコスパを重視したい」というシチュエーションにおいて、これほど心強い味方はありません。 トニックウォーターと合わせるジンの選び方 カクテルの王道であるジントニックをより美味しく楽しむためには、ベースとなるジンの特性とトニックウォーターの相性を考慮することが極めて重要です。例えば、ジュニパーベリーの香りが際立つクラシックなロンドン・ドライ・ジンには、シュウェップスやウィルキンソンのような王道でキレのあるトニックがよく調和します。 一方で、近年のトレンドである現代的なクラフトジン(シトラス系やフローラル系のボタニカルを前面に出した銘柄)には、フィーバーツリーのような自然な甘みと複雑な苦味を持つプレミアムトニックを合わせることで、それぞれの香りがお互いを打ち消し合うことなく、幾重にも重なり合う贅沢なアロマを生み出すことができます。自分なりの組み合わせの妙を試行錯誤するのも、宅飲みにおける大きな醍醐味の一つです。 氷と温度管理が生むカクテルのクオリティ 自宅で美味しいジントニックやカクテルを作る際に、意外と見落とされがちなのが「氷の状態」と「温度管理」です。冷蔵庫でしっかりと冷やされたトニックウォーターを使用することはもちろんですが、グラスに入れる氷もできる限り溶けにくい良質なものを選ぶ必要があります。 グラスに氷を入れてしっかりとステアしてグラス自体を冷やし、溶けた水分を捨ててから新しい氷を足すといった細かなプロセスの積み重ねが、炭酸の抜けを防ぎ、最後までキリッとした冷たさとキレを保つ秘訣となります。少しの手間をかけるだけで、お店で飲むような極上の味わいを自宅でも簡単に再現することが可能です。 ...

2026年10月11日 · 1 分 · 126 文字 · kingsworksub-jpg

クラフトコーラの原液は、割る人が最後の調合を担う

コーラという飲み物は、あまりにも完成された姿で目の前に現れるので、それが何から組み立てられているのかを考える機会がほとんどない。缶を開ければ同じ色、同じ泡、同じ甘さがいつでも待っている。ところが2018年ごろから、日本でも「クラフトコーラ」と呼ばれる小さな作り手たちが、スパイスと柑橘を自分で配合した原液を瓶に詰めて売り始めた。炭酸水で割るのは飲む側の仕事で、濃さも温度も合わせる相手も自分で決める。 この流れが面白いのは、大手のコーラの「別バージョン」を作っているのではなく、コーラという飲み物をいったん部品に戻して、組み立て直しているところだと思う。この記事では、コーラがもともとどういう飲み物だったのかを振り返り、その味を形づくる部品を整理したうえで、伊良コーラ、ともコーラ、UMAMI COLAという3つの作り手を手がかりに、原液という売り方がもたらす自由について考えてみたい。 コーラはもともと薬局のカウンターで生まれた 市場で山ごとに売られるコーラナッツ。西アフリカでは噛んで疲れを和らげる習慣があったPhoto: Dnshitobu / CC BY-SA 4.0 コカ・コーラが最初に売られたのは1886年5月、アメリカ南部アトランタの薬局だった。考案したのは薬剤師のジョン・ペンバートンで、1杯5セントでソーダファウンテンから注がれていた。その前身は、彼が1880年代前半に売り出した「ペンバートンのフレンチ・ワイン・コカ」という強壮飲料で、フランスで人気を集めていたワインとコカの葉の飲み物を手本にしたものだった。アトランタで禁酒の条例が施行されることになり、ワインを抜いて砂糖と炭酸で組み直した結果が、のちに世界中で飲まれる黒い炭酸になった。 名前の由来になったのは、コカの葉とコーラナッツという二つの原料だ。コーラナッツは西アフリカの熱帯雨林に育つ木の種子で、カフェインを2〜4%ほど含み、テオブロミンやタンニンも持っている。ギニアやシエラレオネ、ナイジェリアなどでは、古くから噛んで喉の渇きや疲れを和らげるものとして親しまれてきたし、客をもてなすときや儀礼の場で分け合う大切な贈り物でもあった。写真のように、市場では小さな山に分けて売られていることが多い。 つまりコーラは、最初から「元気を出すための薬局の飲み物」として生まれている。いまのクラフトコーラの作り手が、スパイスや生薬の知識を出発点にしていることが多いのは、ある意味でこの原点に帰っているとも言える。甘い清涼飲料というより、香りの強い植物を組み合わせて体に効かせる調合物。そう考えると、コーラを手作りするという発想も、決して奇抜なものではないと感じる。 黒い炭酸を分解すると、柑橘とスパイスと酸が残る コカ・コーラの香りの配合は「マーチャンダイズ7X」と呼ばれ、ごく限られた人しか知らない企業秘密として語られてきた。中身は公表されていないが、香りの骨格についてはおおよその見当がついている。手がかりのひとつが、2001年に誰でも使える形で公開された「OpenCola」というレシピだ。そこに並ぶ精油は、オレンジ、ライム、カシア(シナモンの仲間)、レモン、ナツメグ、コリアンダー、ネロリ、ラベンダー。量の多い順に見ると、主役はオレンジとライムで、そこにカシアとナツメグの温かい香りが重なり、ネロリやラベンダーがごく少量で花のような余韻を添える構成になっている。 この配合を眺めていると、コーラの正体は「柑橘とスパイスの飲み物」なのだとよく分かる。私たちがコーラらしいと感じている香りは、実のところレモンやオレンジの皮の苦みと、シナモンやナツメグの甘い温かさが混ざり合ったところに生まれている。そこに砂糖の甘みと、カラメルの色と香ばしさが加わる。 もうひとつ見落としがちなのが酸だ。大手のコーラの多くはリン酸を使っていて、これが舌の両脇をきゅっと締めるような鋭さを生んでいる。リン酸は酸っぱさ以外の香りをほとんど持たないので、柑橘やスパイスの香りを邪魔せずに、甘さを引き締める役目に徹してくれる。一方、クラフトコーラの多くはレモンやライムの果汁、あるいはクエン酸で酸味を出している。こちらは酸そのものに柑橘の明るさがあるので、飲み口がやわらかく、果実の印象が前に出やすい。同じ「コーラ」でも、酸の選び方ひとつで性格がずいぶん変わる。 OpenColaのレシピは、こうして作ったシロップを炭酸水で5倍に割るよう指示している。つまり、コーラはもともと「濃いシロップを炭酸で割る飲み物」として設計されていた。ソーダファウンテンの時代には、店の人がシロップと炭酸水をその場で合わせていたのだから、原液という売り方は歴史をさかのぼれば、むしろ本来の姿に近い。 伊良コーラ、漢方の工房から始まった原液 伊良コーラの原液。カワセミのラベルに「SINCE 1954」とあるPhoto: 漱石の猫 / CC BY-SA 4.0 日本のクラフトコーラを語るとき、最初に名前が挙がるのが伊良コーラだと思う。作り手は「コーラ小林」を名乗る小林隆英さんで、2018年に東京で販売を始めた。最初は「カワセミ号」と名づけた小さな移動販売車で売り歩き、のちに高田馬場に総本店を構えている。原点にあるのは、祖父が営んでいた漢方の工房「伊良葯工」だ。生薬を刻んで煎じる仕事を受け継ぐような形で、コーラの原液づくりが始まったという。ラベルに描かれたカワセミと「SINCE 1954」の文字は、その工房の歴史を引き継いでいることを示している。 原材料のラベルには、レモンやライム、砂糖に続いて、シナモン、バニラビーンズ、クローブ、コリアンダー、カルダモン、ナツメグといったスパイスが並ぶ。数えると10種類を超え、ひとつひとつを煮出して香りを重ねている。原液をそのまま少し舐めると、まずシナモンとクローブの温かい香りが強く立ち、遅れてレモンの皮のような苦みがやってくる。甘さは砂糖らしくすっきりしていて、ねっとりした重さはない。炭酸水で割ると、この香りの層がほどけて、大手のコーラよりずっとスパイスの輪郭がはっきりした飲み物になる。正直、最初の一口はコーラというより、冷たいチャイやジンジャーエールに近いと感じる人もいると思う。 瓶は100mlと250mlの2サイズがあり、写真の右奥に見えるように色の淡い限定品が並ぶこともある。250mlの原液はおおむね3,000円前後で、決して安い飲み物ではない。ただ、1杯に使う原液は30〜40mlほどなので、1本から7〜8杯は作れることを考えると、1杯あたりの値段はカフェの飲み物より少し安いくらいに収まる。原液のほかに、すぐ飲める缶入りの製品も出ていて、コンビニの棚で見かけることもある。 ともコーラとUMAMI COLA、甘みと香りの出どころを変える 伊良コーラがスパイスの重なりを前に出すのに対して、ともコーラは国産の柑橘とハーブの香りを軸にしている。作り手は調香師で、香りを組み立てる仕事の延長としてコーラの原液を作っている。15種類以上のハーブやスパイスに、高知県で農薬を使わずに育てたレモンやオレンジ、ライムを合わせ、きび砂糖と黒糖で甘みをつけて、添加物を加えずに仕上げているのが特徴だ。200mlの瓶で5〜6杯分になる計算で、飲食店やホテルにも卸されていて、全国の店でカクテルやノンアルコールの一杯として使われている。香りの印象は伊良コーラよりも明るく、柑橘の皮の爽やかさが先に来るタイプだと思う。黒糖のこくが底にあるので、甘さは控えめでも味が薄く感じない。食事と一緒に飲んでも口の中が重くならないのもいいところだ。 UMAMI COLAは、さらに大胆に甘みの出どころを変えた。砂糖の代わりに、国産の米麹で作った甘酒を甘みのベースにしている。米麹の甘さはブドウ糖が中心で、砂糖のような鋭い甘さではなく、丸く広がる甘さになる。そこにトゥルシー(ホーリーバジル)やエルダーフラワーなど10種類以上のハーブとスパイスを重ねている。麹由来のアミノ酸が含まれるので、名前のとおり、飲んだあとにほんのりとした旨みが残るのが面白いところだ。2020年に東京で生まれたブランドで、ほかの2つと違って、主力は振ってから開ける缶入りの完成品だ。2025年にはセブン-イレブンの一部地域の店舗にも並ぶようになった。原液から始まったクラフトコーラの流れの中で、あえて完成品で勝負しているところにも、作り手の考え方が表れていると思う。 3つを並べてみると、クラフトコーラという言葉でひとくくりにされていても、組み立て方はまったく違う。伊良コーラはスパイスを主役に、ともコーラは柑橘とハーブを主役に、UMAMI COLAは甘みそのものを作り変えるところから始めている。大手のコーラが「誰が飲んでも同じ味」を目指すのに対して、クラフトコーラは作り手がどの部品に重心を置くかで、まるで別の飲み物になる。そこがこのジャンルのいちばんの面白さだと感じている。 原液とボトル、割り方を自分で決めるということ 白いラベルの伊良コーラ。季節や限定の原液は色も香りも変わるPhoto: スロッさん / CC BY-SA 4.0 クラフトコーラの多くは、原液とそのまま飲めるボトルや缶の両方を用意している。どちらを選ぶかで、楽しみ方はかなり変わる。缶やボトルは作り手が決めた濃さと炭酸の強さで完成しているので、作り手が想定した味をそのまま受け取れる。初めて飲むなら、まずこちらで基準の味を知っておくのがいいと思う。一方の原液は、最後の調合を飲む人に任せている。 一般的な目安は、原液1に対して炭酸水が3〜5。濃いめが好きなら1対3、すっきり飲みたいなら1対5くらいから始めて、自分の好みを探していけばいい。炭酸水の選び方でも印象は変わる。強めの炭酸を使えば大手のコーラに近い刺激が出るし、やわらかい炭酸ならスパイスの香りがゆっくり立ち上がる。グラスに氷をたっぷり入れ、原液を先に注いでから炭酸水を静かに足し、マドラーで一度だけ底から持ち上げるように混ぜると、泡が抜けにくい。 割る相手は炭酸水に限らない。牛乳や豆乳で割るとスパイスの香りがやわらかくなり、チャイのような飲み物になる。お湯で割ればホットコーラになり、シナモンやクローブが湯気と一緒に立ちのぼって、寒い夜にちょうどいい。ウイスキーやラムを少し加えれば、ハイボールともラムコークとも違う、香りの強い一杯になる。原液という形は、こうした自由を最初から前提にしている。濃さ、温度、合わせる相手。その全部を決めるのが飲む人だというところに、ボトルの完成品にはない楽しさがあると思う。 保存については、原液は開封したら冷蔵庫に入れ、なるべく早めに使い切るのがいい。添加物を使わない製品が多いので、大手のコーラのように常温で長く置いておけるものではない。そのぶん、香りが新鮮なうちに飲み切る楽しみもある。 大手も「割るためのコーラ」を作った コカ・コーラ シグネチャーミキサーズの「スモーキーノーツ」。ラベルにイランイランやグアヤクウッドの名が並ぶPhoto: FlippyFlink / CC0 クラフトコーラの広がりは、大手にも影響を与えた。コカ・コーラは2019年にヨーロッパとイギリスで、ウイスキーやラムなどの濃い色の蒸留酒と合わせるためのコーラ「シグネチャーミキサーズ」を発売している。スモーキー、スパイシー、ハーバル、ウッディの4種類で、それぞれロンドンやバルセロナのバーテンダーと共同で開発された。200mlの小さな瓶は、有名な曲線のボトルよりも古い時代の形を模したもので、ラベルには開発したバーテンダーの署名が入っている。 写真のスモーキーノーツのラベルには、イランイラン、アンブレットシード、ペルーバルサム、オークエキス、グアヤクウッドという香りの素材が書かれている。花の香り、ムスクのような種子の香り、樹脂の甘い香り、樽材と燻した木の香り。コーラの骨格に、香水のような素材をあえて上乗せしているのが分かる。大手が自分たちの看板商品をわざわざ「部品」として扱い、そこに香りを足して酒と合わせる前提で売り出したことは、コーラを組み立て直すという発想が、もう小さな作り手だけのものではなくなったことを示していると思う。 ただし、シグネチャーミキサーズはあくまで完成品のボトルで、濃さを変えたり温めたりする自由はない。原液を自分で割るクラフトコーラとは、似ているようで出発点が違う。大手は「この酒にはこの香り」という答えを用意し、クラフトコーラは答えを飲む人に委ねている。どちらが優れているというより、同じ発想の両端にあるものだと感じる。 まとめ 作り手 甘みの軸 香りの軸 主な形 印象 伊良コーラ 砂糖 シナモン・クローブ・カルダモンなどのスパイス 原液(100ml・250ml)、缶 スパイスの輪郭がはっきりした力強い味 ともコーラ きび砂糖・黒糖 高知県産の柑橘とハーブ 原液(200ml・720ml) 柑橘が先に来る明るい味 UMAMI COLA 米麹の甘酒 トゥルシー・エルダーフラワーなどのハーブ 缶入りの完成品 丸い甘さと、あとに残るほのかな旨み コーラを部品に分けてみると、柑橘の油、温かいスパイス、花の香り、酸、甘み、そしてカラメルの色と香ばしさが残る。大手のコーラは、それをいつ誰が飲んでも同じになるよう精密に固定した飲み物で、クラフトコーラは、その部品のどれに重心を置くかを作り手ごとに選び直した飲み物だ。そして原液という形は、最後のひと手間を飲む人の手元に残している。 ...

2026年10月9日 · 1 分 · 86 文字 · kingsworksub-jpg

VOX 強炭酸水 コーラフレーバーは香りだけのコーラになれるか

フォルダ株式会社が手がける炭酸水ブランド「VOX」には、ストレート・シリカ・レモン・ミント・コーラの5ラインアップが並ぶ。違うのは香りの種類だけかと思いきや、その中に「無糖なのにコーラの香りがある」一本が混じっている。多数派ではない一例として据えて、妙味と限界を見ていく。 まず、VOX を作った会社の体格から VOX 強炭酸水 コーラフレーバー 500ml×24本画像提供:FOLDA公式オンラインモール フォルダ株式会社は2006年2月設立。資本金5,000万円、2025年12月期の売上高52.3億円、従業員数は連結49名と、中規模メーカーとしてはほどよい規模だ。本社は東京都渋谷区。事業内容には「食品、飲料、日用品の企画・販売・製造」と書かれていて、飲料を自社で製造する体制を採っている。 製造拠点は宮城県刈田郡蔵王町の蔵王工場で、2023年4月に荒井商事からミネラルウォーター事業を譲り受けた経緯がある。VOX の原料水まわりも、この移管と無関係ではない。 パッケージ設計から容器、そして中身まで自社で手がけている。企画と制作が同じ会社の中で回っているため、仕上がりに一貫性があると思う。 VOX ブランドはこの体制で2016年に始まった。Sports・Music・Fashion・Art —— 4つのカルチャーを軸に、炭酸という素材を取り巻く文化的な環境を一緒に作っていく、という方針だ。ブランドメッセージは「CHANGE YOUR LIFE」で、「炭酸の力でLIFEをCHANGEする」とある。 製品ページの「イベントのオーガナイズやコンテンツのアーカイブ、サンプリングや賞品提供を通じてライフスタイルの中に炭酸があるシーンを創る」という記述を見ると、飲料メーカーとしての一歩先にある立ち位置を意図している印象を受ける。 5.0GV は業界でどのあたりの位置なのか 数字の話に戻そう。VOX が掲げる「VOLUME MAX 炭酸充填量 5.0GV」の 5.0GV とは、どれくらいの量なのか。 GV はガスボリュームの略称で、飲料1Lに溶け込む炭酸ガスの体積(L)を指す。5.0GV なら、1L の水に対して5L の炭酸ガスを溶かし込んでいることになる。炭酸は水温が低いほど溶けやすく、充填量に比例して開封時の泡立ちと飲んだときの刺激が強くなる。 2026年時点で公開されている主な国内品目の充填量を並べてみるとこうなる。 炭酸充填量 商品名 販売元 6.0GV 炭酸水KUOS Premium 株式会社OTOGINO 5.5GV ストロング5.5 強炭酸水 アイリスオーヤマ株式会社 5.5GV 炭酸水KUOS 株式会社OTOGINO 5.2GV 龍馬 POWER SODA 日本ビール株式会社 5.1GV 糸島 強炭酸水 株式会社スターナイン 5.0GV VOX フォルダ株式会社 5.0GV 富士山の強炭酸水 アイリスオーヤマ株式会社 5.0GV 伊賀の天然水 強炭酸水 サンガリア 5.0GV CRYSTAL SPARK アイリスオーヤマ株式会社 5.0GV 四万十のめぐみ 強炭酸水 株式会社MATSUMOTO Water VOX は国内公表品の中で、6.0GV のKUOS Premium を先頭に置いたときの 5.0GV グループ に位置する。表現ぶりで言えばかなり高い側に属する。 ...

2026年9月26日 · 2 分 · 218 文字 · kingsworksub-jpg

「史上最強」の泡は本当か?アイシー・スパーク from カナダドライ レモン

「日本コカ・コーラ史上最強の強炭酸水」というキャッチコピーを背負って売り場に並んでいるのが「アイシー・スパーク from カナダドライ レモン」だ。ラベルレス430mlペットボトル×24本というまとめ買い向けの箱を前に、この一本の中身をじっくり見ていく。 「冷却スパーク技術」というアイデア アイシー・スパーク from カナダドライ レモン ラベルレス 430mlPET×24本Amazonで見る → このシリーズの売りは「冷却スパーク技術」と呼ばれる製法にある。仕組みは意外とシンプルで、炭酸ガスは液温が低いほど水に溶け込みやすいという物理現象を利用し、製造時の冷却工程を業界標準よりさらに低い温度まで詰めることで、過去にないガス圧入量を実現したというものだ。新しい添加物や特殊な素材を使っているわけではなく、あくまで冷やし方を工夫した「力技」というのが正直な感想で、そのぶん原理自体はすっと納得できる。あわせて「開栓後も炭酸が長持ちする新処方」も採用されているらしいが、こちらの具体的な仕組みまでは公開情報からは読み取れなかった。 コップに注ぐと、泡が思いのほか大きく、勢いよく跳ねる。飲み終えるまでずっとパチパチと弾け続けている感覚があり、喉に当たる瞬間はまさに「刺さる」という表現がしっくりくる強さだ。きめ細かい泡というより、大粒の泡がまとまって押し寄せてくるタイプの強炭酸だと思う。 原材料と栄養成分はいたってシンプル 原材料表示は、レモン果汁(アルゼンチン製造)、レモンピールエキス/炭酸、香料、酸化防止剤(ビタミンC)、酸味料という構成。栄養成分は100mlあたりエネルギー0kcal、脂質0g、炭水化物0g、たんぱく質0g、食塩相当量0gと、糖類もカロリーも一切含まない無糖・無カロリーの炭酸水に分類される。特定原材料のアレルゲンも含まれていない。果汁を使っているぶん、香料だけで柑橘感を出す透明炭酸とは違い、レモンピール由来のほのかな苦みと香りが感じられるのが個人的には気に入っている。 味の印象 — ウィルキンソンより荒々しい刺激 一口目は、とにかく炭酸の勢いに驚かされる。強炭酸を謳う商品はいくつも飲んできたが、ウィルキンソン タンサンのようなきめ細かい刺激とはタイプが違い、こちらはもっと粒の大きい泡がまとめて弾けるような、荒々しい当たり方をする。レモンの香りは果汁由来のすっきりした苦みがベースで、香料だけの製品にありがちな作り物めいた甘さがない分、後味はかなりドライだ。無糖なので飲んだ後に口の中がべたつかず、そのままごくごく飲み進められる爽快さがある。 このドライな味わいのおかげで、レモンサワーやハイボールの割り材として使うと主張しすぎず馴染みがいい。自家製のジンジャーエール風カクテルを作るときのベースにしても、余計な甘さが乗らないぶん使い勝手がいいと感じている。手元に届いた分は賞味期限がそこまで長くなかったので、まとめ買いする場合はある程度のペースで飲み切る前提で考えたほうがよさそうだ。 なぜラベルレスなのか アイシー・スパーク from カナダドライ レモン ラベルレス 430mlPET×24本Amazonで見る → 今回取り上げている430ml×24本は、通常のラベル付き490ml版とは別に展開されているまとめ買い専用のラベルレスパッケージだ。コカ・コーラシステムは近年、500ml「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」などを含めてラベルレスボトルの展開を広げている。理由は大きく二つあって、一つはラベル分のプラスチックがまるごと不要になる環境面の配慮、もう一つはラベルを剥がす手間がなくごみの分別が楽になるという消費者側の利便性だ。実際、ラベルレス化によって出荷数量が大きく伸びたという報道もあり、通販でのまとめ買い需要とは相性がいい施策だと思う。一方で、ラベルがない分店頭での見た目の訴求力は落ちるため、店頭ではラベル付き、通販ではラベルレスという棲み分けが進んでいるようだ。内容量が490mlからやや少なめの430mlになっているのも、通販専用パッケージゆえの価格調整だろう。 カナダドライというブランドの中の位置づけ カナダドライは100年以上の歴史を持つジンジャーエール発祥のブランドで、日本では日本コカ・コーラがライセンス販売している。日本国内での展開は大きく二系統に分かれていて、一つは昔からある「カナダドライ ジンジャーエール」のような定番の炭酸飲料、もう一つが今回取り上げている無糖の強炭酸水系だ。 この強炭酸水系は、2018年に発売された「カナダドライ ザ・タンサン・ストロング/レモン」が前身にあたる。2021年5月に「アイシー・スパーク from カナダドライ」としてリニューアル発売されたタイミングで、無糖炭酸水カテゴリー全体が整理され、当時併存していた他の無糖炭酸水ブランドもろとも、このアイシー・スパークに集約された経緯がある。パッケージは2022年4月と2023年2月にも刷新されており、2023年のリニューアル時には人気コンテンツとのコラボボトルも展開された。ジンジャーエールの伝統と、強炭酸というトレンドを掛け合わせたのが、このシリーズの立ち位置だと理解している。 価格・入手性 Amazon.co.jpでは430ml×24本のラベルレス版が1,300円台から2,000円台の間で推移しており、1本あたりに換算すると55〜80円ほど。価格比較サイトでも同様の価格帯で複数の通販サイトが取り扱っており、2026年時点で販売終了やリニューアルの気配は見当たらない。むしろ無糖強炭酸水というジャンル自体が定着してきていることもあって、安定して手に入る一本だと思う。 「史上最強」という肩書きは伊達ではなく、実際に泡の当たりの強さは群を抜いている。きめ細かい炭酸が好みなら物足りなく感じるかもしれないが、喉にガツンとくる刺激を求めているなら、この一本は期待を裏切らないはずだ。 関連記事: レモン2個分の酸味に振り切った、キレートレモン Wレモン · 禁酒法時代を生き延びた甘口、カナダドライ ジンジャーエール · カナダドライ ザ・タンサン ストロングは泡だけで勝負する · キリンレモン 炭酸水が無糖で受け継ぐ1928年の透明感

2026年9月21日 · 1 分 · 55 文字 · kingsworksub-jpg

カナダドライ ザ・タンサン ストロングは泡だけで勝負する

割り材といえばウィルキンソン、という空気が長らく続いていたところに、コカ・コーラシステムが「THE」を頭に付けて殴り込んできたのが「ザ・タンサン」シリーズだ。その中でもラベルレス・ケース販売専用という一風変わった売られ方をしている「カナダドライ ザ・タンサン ストロング」430ml×24本を、今回は隅から隅まで見ていく。 カナダドライというブランドの出自 カナダドライ ザ・タンサン ストロング ラベルレス 430ml×24本Amazonで見る → カナダドライの歴史は意外と古く、1904年にカナダ・トロントの薬剤師ジョン・J・マクローリンが、シャンパンのような上品な辛口(dry)を目指してジンジャーエールを開発したのが始まりだ。1920年代の米国禁酒法時代には「お洒落なノンアルコール飲料」「カクテルの割り材」として一気に人気が広がり、世界的なブランドに育っていった経緯がある。その後何度か企業の売買を経て、現在は米国のKeurig Dr Pepper傘下のブランドになっている。 日本では1957年にサッポロホールディングスの前身にあたる日本麦酒と米カナダドライ社の提携でひっそり売り出されたのが最初で、1990年に日本コカ・コーラが販売権を取得してからは、コカ・コーラシステムがライセンス製造・販売する体制に切り替わった。ジンジャーエールのイメージが強いブランドだが、今回扱う「ザ・タンサン ストロング」はジンジャーエール系列とは別の、無糖・無香料のプレーンソーダウォーターのラインだ。 「ザ・タンサン」というシリーズの立ち位置 「ザ・タンサン ストロング/レモン」の初代は2018年3月に全国発売され、2019年3月には「より強い刺激・より持続する炭酸」を掲げてリニューアルしている。公式のキャッチコピーは「強炭酸は、おいしさで選ぶ時代へ。」――それまで炭酸水といえば酒の割り材という扱いが中心だったところに、単独の飲み物としても成立する強炭酸を、という狙いが透けて見える。コカ・コーラシステムとしては歴代最高クラスのガスボリュームを謳っているらしく、炭酸ガスそのものまで専用フィルターで濾過して「クリスタルクリアな泡」を実現し、酸味を抑えるためpHにもこだわったと説明されている。 味の面では無糖・ゼロカロリー・ノンカフェインで、原材料はクエン酸ナトリウムなどごくシンプル。飲み比べてみると、ウィルキンソン タンサンよりわずかに炭酸の粒が細かく、刺激も心なしか穏やかに感じる。その代わり微量の塩味がふわっと後を追いかけてくるような印象があり、キリッとした角のあるウィルキンソンに対して、こちらは少し丸みのある強炭酸という棲み分けに見える。2018年の投入経緯を見ても、業界的には「ウィルキンソンに対する自社ブランドの本格対抗馬」という文脈で語られることが多いようだ。 ラベルレス・ケース販売限定というちょっと変わった売り方 今回のASIN(430ml×24本)は2020年8月3日に発売されたラベルレスバージョンで、綾鷹・爽健美茶に続いてコカ・コーラシステムが3ブランド目としてラベルレス化した製品にあたる。通常の490ml有ラベル版とは別物で、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングといったオンライン通販のケース販売専用という扱いになっている。コンビニやスーパーの店頭には並ばないので、見かけたことがない人がいても不思議はない。 ラベルレス化の理由は環境配慮――ラベルを剥がす手間やプラスチックごみを減らす狙いに加えて、コロナ禍で伸びたネット通販のまとめ買い需要に対応する意味合いもあったようだ。通常はラベルに記載する原材料表示などの法定表示は、外箱のダンボールに印刷することで対応している。発売時の希望小売価格は税別2,640円/24本ケースだったとのことで、今のAmazon実勢価格(1,300円前後)と比べるとかなり値下がりしていることになる。 割り材としての実力 カナダドライ ザ・タンサン ストロング ラベルレス 430ml×24本Amazonで見る → 公式サイトでは有ラベル版の490mlについて、カシス&グレープのスカッシュやオレンジ&ブランデーのオレンジスカッシュといったカクテルレシピが紹介されていて、直飲み訴求だけでなく割り材としての使い道もちゃんと意識されている。香りのついた「レモン」タイプはウイスキーのハイボールとの相性を推す声が目立つが、無香料の「ストロング」はクセがないぶん、レモンサワーや酎ハイ、カクテル全般にまんべんなく使える汎用型の割り材だと感じる。強炭酸が抜けにくい印象もあり、作り置きしたハイボールが時間が経ってもへたりにくいのはありがたいポイントだ。 価格・入手性 Amazonでは430ml×24本のケースが1,300円前後で扱われていて、これは主要な強炭酸水の中でもかなり安い部類に入る。楽天市場やYahoo!ショッピング、価格.com掲載店を見ると同じ規格で1,700円台から2,700円台まで幅があり、まとめ買いならAmazonが有利なことが多い印象だ。48本ケースのバリエーションも存在するので、消費ペースに応じて選べる。店頭では手に入らない分、切らしたときにすぐ買い足せないのは唯一の弱点かもしれない。 類似の強炭酸プレーンソーダとの違い ウィルキンソン タンサンは炭酸水市場で長年トップを走ってきた老舗ブランドで、粒がやや大きめでガツンとした刺激が持ち味。サンガリア系の強炭酸水は天然水ベースで刺激が比較的マイルドめに作られていて、強炭酸が少し苦手な人にも向いている。その中間くらいに位置するのがこの「ザ・タンサン ストロング」で、刺激はしっかりありつつも角が丸く、微量の塩味で味に輪郭を持たせているのが個性だと思う。どれが一番良いかは好みが分かれるところで、実際に飲み比べてみるのが一番早い。 ラベルレスでケース販売限定という、店頭ではまず出会えない売られ方をしている一本だけに、知らない人もまだ多そうだ。ウィルキンソン一強だった強炭酸水の棚に、静かに割って入ってきた実力派として覚えておいて損はないと思う。 関連記事: レモン2個分の酸味に振り切った、キレートレモン Wレモン · 禁酒法時代を生き延びた甘口、カナダドライ ジンジャーエール · 「史上最強」の泡は本当か?アイシー・スパーク from カナダドライ レモン · キリンレモン 炭酸水が無糖で受け継ぐ1928年の透明感

2026年9月21日 · 1 分 · 52 文字 · kingsworksub-jpg

三ツ矢サイダーの透明な甘さは140年でどう守られてきたか

自動販売機でもスーパーでも、当たり前のようにそこにある「三ツ矢サイダー」。缶250ml×20本というオーソドックスな通常版を軸に、この透明な炭酸飲料を隅から隅まで見ていく。 始まりは兵庫の鉱泉水だった アサヒ飲料 三ツ矢サイダー 缶250ml×20本Amazonで見る → 三ツ矢サイダーの歴史は1884年(明治17年)まで遡る。兵庫県川辺郡多田村(現在の川西市)で湧き出ていた天然の炭酸鉱泉水が「平野水(ひらのすい)」として商品化されたのがそもそもの出発点だ。この鉱泉自体は、1881年に宮内省の依頼で全国の水源を調査していた英国人科学者ウィリアム・ガウランドによって見出されたとされている。当初は無糖・無着色、香料も入っていない、ただの天然炭酸水だった。1890年には皇太子(のちの大正天皇)の御用品にも選ばれたというから、当時からかなり格の高い飲み物として扱われていたのだろう。 「三ツ矢」という名前は、平安時代の武将・源満仲が三本の矢を授かったという言い伝えと、この地の領主だった「三ツ矢旗兵衛」に由来すると言われている。1899年に商標登録され、1907年にはフレーバーを加えた「三ツ矢印平野シャンペンサイダー」として発売された。その後、フランス側から「シャンパーニュ」の名を連想させるという指摘があり、1968年に現在の「三ツ矢サイダー」という名称に落ち着いている。翌1969年には人工甘味料を全廃し、砂糖と天然香料だけを使った無色透明のサイダーへとレシピを刷新した。これが、今も続く現行製品の直接の原型だ。1972年にアサヒ飲料(当時のアサヒビール系列)がブランドを継承し、そこから半世紀以上にわたって国民的な炭酸飲料として棚に並び続けている。140年前の鉱泉が、今も缶やペットボトルの中身につながっていると思うと、ちょっと不思議な気分になる。 原材料はいたってシンプル 原材料表示を見ると、果糖ぶどう糖液糖、炭酸、酸味料、香料というごく短い構成になっている。100mlあたりのエネルギーは42kcal、たんぱく質・脂質は0g、炭水化物は11g、食塩相当量は0.03g。果汁は一切使われておらず、あくまで香料でレモンやライムを思わせる爽やかさを再現している飲み物だ。着色料も入っていないので、見た目は炭酸水と見分けがつかないくらい透明なまま。この「果汁ゼロなのに柑橘系の爽やかさがある」という組み立て方は、海外の炭酸飲料と比べたときに三ツ矢サイダーらしさが一番出ている部分だと思う。 味の印象 — スプライトともジンジャーエールとも違う 一口飲んで感じるのは、甘さがすっと引いていく軽さだ。レモンライム系の炭酸飲料としてはスプライトが世界的に有名だが、あちらは果汁を実際に配合しているぶん酸味がはっきりしている。対して三ツ矢サイダーは香料だけで柑橘感を作っているせいか、酸味より先に甘い香りが立つ。個人的には、微かにバブルガムやラムネを思わせる香りがあるように感じていて、この「甘い香り先行、酸味は控えめ」というバランスが、他の透明炭酸とは違う立ち位置を作っているのだと思う。 炭酸の強さについては缶によって印象が少し変わる気がしていて、開けたてはしっかり弾けるものの、時間が経つとやや抜けやすい。個体差か保存状態の差かは分からないが、キンキンに冷やしてすぐ飲み切るのが一番おいしく感じるタイプの炭酸だ。強炭酸を売りにしたウィルキンソン タンサンのような商品と比べると刺激自体は控えめで、そのぶん喉への当たりは優しい。ストレートで飲むのはもちろん、焼酎やウイスキーの割り材にしても、香料の甘さが主張しすぎずちょうどいい脇役になってくれる印象だ。 容量とラインナップの広がり アサヒ飲料 三ツ矢サイダー 缶250ml×20本Amazonで見る → 三ツ矢サイダーは缶160ml・250ml(20本/30本入り)・500ml、ペットボトルの300ml・430ml・500ml・1.5L、ボトル缶300ml、リターナブルびん200mlと、驚くほど幅広い容量で展開されている。今回取り上げている缶250ml×20本は、その中でもオーソドックスな通常版で、糖分・カロリーともに標準的な処方だ。 同じブランドには、カロリー・糖質ゼロの「三ツ矢サイダーZERO」、食物繊維入りの「三ツ矢サイダーW」、2024年に登場した強炭酸仕様の「三ツ矢サイダー ゼロストロング」、クエン酸をたっぷり配合した酸っぱめの「三ツ矢ウルトラストロングレモン」など、派生ラインが次々と増えている。糖ありの通常版と無糖のZERO系は味の輪郭がかなり違うので、「三ツ矢サイダー」とひとくくりにせず、パッケージの表示を確認してから選ぶのがおすすめだ。この記事で扱っているのはあくまで昔ながらの甘さを残した通常版で、素直に甘い炭酸飲料が飲みたいときにはこちらの方が満足度が高いと感じている。 価格・入手性 Amazon.co.jpでは缶250ml×20本が1,500円前後、1本あたり75〜80円ほどで購入できる。価格比較サイトを見ると、缶250ml×30本入りの商品では店舗によって1,480円台から2,000円台まで幅があり、まとめ買いするなら販売店ごとの価格差をチェックする価値はありそうだ。自動販売機・コンビニ・スーパーとどこでも定番として扱われており、2026年時点でも販売終了やリニューアルの気配はない。むしろ派生商品が増え続けている、ブランドとして元気な状態にあると言っていいと思う。 140年前の鉱泉水から始まったブランドが、今も変わらず「甘くて爽やかな透明炭酸」という立ち位置を守り続けているのは、なかなか珍しいことだと思う。強炭酸や無糖系が増えている中で、あえて昔ながらの甘さのある通常版を選ぶのも、たまには悪くない選択肢だ。 関連記事: 三ツ矢サイダーZEROは142年目に見つけたゼロの答え · CRYSTAL SPARK ラムネで、果汁ゼロの瓶の記憶をたどる · 香りだけで満足できるか?CRYSTAL SPARK グレープソーダの無糖設計 · OZA SODAの改名に込められた二つの意味

2026年9月21日 · 1 分 · 40 文字 · kingsworksub-jpg

部活帰りの喉が覚えている黄色い一本、大塚食品 MATCH(マッチ)

自動販売機の隅っこに、水色のラベルに黄色い液体という組み合わせでいつも並んでいる「MATCH(マッチ)」。ポカリスエットやアクエリアスのようなイオン飲料とはどこか違う、ビタミン配合の微炭酸飲料というちょっと変わった立ち位置の一本を、今回は隅から隅まで見ていく。 1996年生まれ、もう30年選手のロングセラー 大塚食品 MATCH マッチ 500ml×24本Amazonで見る → MATCHが発売されたのは1996年。当時は大塚製薬工業という社名だった大塚食品から世に出て、2010年に大塚ベバレジの飲料事業を吸収合併した際に「ジャワティ」などと並んで正式に大塚食品の看板ブランドへ組み込まれた経緯がある。2009年には成分構成を見直すマイナーチェンジを行い、「ビタミン飲料」というカテゴリーをより明確に打ち出す方向へ舵を切ったそうだ。もう30年近く自販機や売り場に並び続けているわけで、清涼飲料の世界では立派な古株といっていい。 面白いのは、発売当初から一貫して「イオン飲料」を名乗っていないこと。ポカリスエットやアクエリアスがナトリウムやカリウムといった電解質補給を軸に据えているのに対して、MATCHは炭酸の爽快感とビタミン・ミネラルの摂取を組み合わせるという、似たようで実は隣のジャンルに立っている飲み物だ。開発時のコンセプトは「部活動終わりにみんなでゴクゴク一気飲みできること」だったらしく、CMに長年バスケットボールを起用してきたのも、部員数が多く男女どちらにも浸透している競技だからという理由があるようだ。このニッチな立ち位置のまま30年生き残っているのは、素直にすごいことだと思う。 成分表を読むと見えてくる設計思想 500mlペットボトルの成分表示を見ると、100mlあたりのエネルギーは39kcal、炭水化物9.8g、食塩相当量0.089g。ビタミン系はビタミンC 70mg、ビタミンB6 1.3mg、ナイアシン4.0mgと、100mlの数値としてはかなり気合が入った配合になっている。500ml換算だとビタミンCはおよそ350mgに達し、これは一般的なビタミンCのサプリメント1粒分に匹敵する量だ。カリウム13mg・マグネシウム0.4〜1.5mg・カフェイン5mgも含まれていて、電解質もゼロではないが、あくまで主役はビタミンという配合バランスに見える。 原材料にはグレープフルーツ果汁が1%配合されている。実はこれ、公式サイドが積極的にアピールしている情報ではなく、「結局MATCHって何味なの?」という長年の疑問に対する答えのようなものだ。個人的にも、初めて飲んだときにグレープフルーツだとはっきり認識できたことは一度もない。そのくらい主張が控えめな果汁の使い方をしている。 味の印象 — オロナミンCでもファンタでもない、独特の座標 一口飲むと、まず微炭酸のシュワシュワ感がやさしく喉に当たる。強炭酸の飲料と比べると刺激はずっと控えめで、ゴクゴク飲んでも喉に負担がかかりにくい設計だと感じる。味わいは甘さ控えめでどこかクセのある後味があり、柑橘の爽やかさというよりビタミン剤的な風味が先に来る。オロナミンCに似ているという声をネット上で見かけることがあるが、個人的にはあそこまで甘くもドロッとしてもおらず、もう少しさらっとした飲み口だと感じている。 正直、この「何味とも言い切れない曖昧さ」こそがMATCHの個性なのだと思う。フルーツジュース的なわかりやすい美味しさを求めて飲むと拍子抜けするかもしれないが、部活後や勉強の合間にビタミン補給がてらゴクゴク飲むという用途で考えると、この控えめな甘さとすっきりした後味はちょうどいいバランスに感じられる。 ラインナップの広がりとパッケージ 大塚食品 MATCH マッチ 500ml×24本Amazonで見る → 基本ラインアップは270ml・500ml・1.5Lのペットボトルと、350ml・480mlの缶。派生商品として2023年10月に「マッチ ビタミンみかん」が登場している。こちらはビタミンCの含有量を通常品の2倍に強化し、みかんの葉をあしらったアイコンでフレーバーを差別化した一本で、受験生や高校生といった健康志向の層をターゲットに想定しているようだ。ゼリータイプの「マッチゼリー」も展開されており、飲料だけでなく食感の違う派生商品にまでブランドが広がっている。 パッケージは水色のラベルに黄色い液体という組み合わせが定番で、この配色は発売から大きく変わっていない印象がある。長年同じ見た目で棚に並び続けているブランドは意外と少ないので、この一貫性もMATCHらしさの一部だと思う。 流通の癖 — 自販機中心という立ち位置 他の炭酸飲料と違って面白いのが、缶タイプのMATCHは大塚グループ系列の自動販売機での取り扱いが中心で、コンビニでは店舗によって置いてあったりなかったりする、というやや特殊な流通構造になっていることだ。学校や職場の自販機で見かける機会は多いのに、いざコンビニで探すと見つからないという経験をした人もいるのではないかと思う。500ml・1.5Lのペットボトルはスーパーやドラッグストア、ディスカウントストアでも扱われているので、まとめ買いしたい場合はペットボトル版を探すのが確実だ。 価格・入手性 Amazonでは500ml×24本セットが扱われており、価格比較サイトを見ると同じ規格のセットが2,000円台前半から3,500円程度まで、販売店によって幅がある。単本なら自販機・コンビニで150〜180円程度が相場で、2023年発売のビタミンみかんは希望小売価格が税別166円とされている。2026年時点で販売終了や大幅なリニューアルの気配はなく、むしろビタミンみかんのような派生商品が増えている、ブランドとして息の長い状態が続いている。 競合との違い ポカリスエットやアクエリアスは、汗で失われるナトリウムやカリウムといった電解質の補給を主目的にした無炭酸のイオン飲料で、脱水対策という明確な役割を担っている。MATCHはそこに炭酸の爽快感を組み合わせ、ビタミン摂取を軸に据えることで、あえて同じ土俵を避けてきたように見える。直接競合するような似た設計の飲料が少ないぶん、この隙間のポジションを30年近くキープし続けてきたのだと思う。 炭酸の刺激とビタミンのちょっと薬っぽい風味が同居する、他にあまり類を見ない一本。強炭酸系やクリアな透明炭酸が並ぶ棚の中で、あえてこの独特な立ち位置を選んでみるのも悪くない。 関連記事: ノースショアの波からコンビニの棚へ、モンスターエナジー パイプラインパンチ · リアルゴールドはカフェインなしで元気を配る · ドデカミンはなぜ元気が出るのか、現場生まれの栄養炭酸 · 名前は変わっても中身は裏切らない「ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい」

2026年9月21日 · 1 分 · 46 文字 · kingsworksub-jpg

名前は変わっても中身は裏切らない「ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい」

「ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい」——正直、初めてこの商品名を見たとき二度見した。長い。しかも意味深に語尾が「叫びたい」で終わっている。この長い名前を背負ったゼロカロリー版ドデカミンを、隅から隅まで見ていく。 毎年名前が変わる、という珍しい商品 ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい 500ml×24本Amazonで見る → このゼロカロリー版ドデカミン、実は中身も味もほぼそのままに、パッケージの商品名だけが毎年変わるという珍しい経歴を持っている。 2024年3月26日発売時の名前は「ゼロしか勝たんドデカミン」 2025年には「ドデカミンのゼロがこんなにおいしいわけがない」に改名 2026年、現行の「ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい」に改名 律儀に年ごとにコピーライターが頭をひねって新しいフレーズを考え、缶の顔だけを毎年着せ替えている格好だ。中身は変わっていないというのが面白いところで、いわば「ラベルで話題を作り続ける」戦略に振り切った一本だと思う。正直なところ、次の名前が何になるのか気になってしまう。 カロリーゼロでも、味の柱はそのまま 肝心の中身は、100mlあたりカロリー0kcal・糖類0g。合成甘味料でしっかり甘みを作りつつ、カロリーと糖類だけをそっくり抜いた設計になっている。カフェインは100mlあたり5.0mg、500mlボトル1本で約25mg相当。缶コーヒー1本にも満たない量で、いわゆるエナジードリンクの主力であるモンスターエナジーやレッドブルと比べると一桁少ない。ガブガブ飲んでも動悸が心配になるほどの量ではなく、「エナジードリンク」というより「ビタミン・アミノ酸系の強炭酸ソーダ」に近いポジションだと感じる。 配合成分は高麗人参エキス、調製ローヤルゼリー、ガラナ、マカに加えて、アルギニン・アラニン・グリシン・ロイシン・イソロイシン・バリンといったアミノ酸群、ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6と、ドデカミンの看板である「12種類の元気成分」路線はゼロ版でもきっちり踏襲している。カロリーを削ってもコンセプトの骨格は崩さない、というつくりの誠実さは評価したい。 飲み口は「甘さと炭酸のバランス」で好みが分かれる 飲んだ人の感想を見ていくと、評価は割とはっきり二極化している。好意的な側は「炭酸が若干マイルドでごくごく飲める」「スッキリした飲み口で甘さ控えめに感じた」「ゼロカロリーであることを抜きにしても気に入った」という声が目立つ。一方で「甘い、ものすごく甘い、舌にずっと残る」「薬っぽさをうっすら感じる」という指摘もあり、合成甘味料特有の後味は好みが分かれるポイントだと思う。オロナミンCを大きくしたような味、という表現がしっくりくる。 個人的には、キンキンに冷やして一気に半分くらい飲むと甘さが気にならず、常温に近づくほど甘みが前に出てくる印象を受けた。冷蔵庫でしっかり冷やしてから飲むのをすすめたい。 ブランドの背骨は「ファイトバクハツ」 ドデカミン自体は2004年発売、名前の由来はギリシャ語で「12」を意味する「ドデカ」。12種類のビタミン・アミノ酸を配合したというコンセプトをそのまま商品名にした、わかりやすい命名だ。ブランドコピーは「ファイトバクハツ!!」で、栄養ドリンク市場の王者だったリポビタンDの「ファイト・一発!」を強く意識した対抗軸だったと言われている。ゼロ版も「カラダ喜ぶファイトバクハツ」というコピーで展開されており、甘い炭酸を罪悪感なく飲みたい30〜40代を主なターゲットに据えて開発された経緯がある。 ラインナップも通常版・ゼロ版・ストロング版・mini缶・BIG缶・タブレットとかなり幅広く、キングダムとのコラボ缶のような限定デザインも定期的に投入されている。カロリーゼロ版がこれだけ名前を変えながらも生き残り続けているあたり、ブランド全体としての体力は十分にあると見ていいと思う。 価格・入手性 ドデカミンのゼロが好きだと叫びたい 500ml×24本Amazonで見る → Amazonでは500mlペットボトル×24本のケースで1,999円前後、1本あたり80円台という計算になる。楽天やヨドバシ.comでも同じ24本ケースの取り扱いがあり、コンビニでの単品購入(1本200円前後が相場)よりケース買いのほうが単価は明確に下がる。名前が毎年変わるせいで検索するときに少し迷うが、パッケージの「ドデカミン」ロゴと赤いボトルデザインを目印にすれば見分けはつく。生産終了やブランド縮小の気配はなく、むしろ改名のたびに話題を作り続けている印象で、しばらくはこの「名前だけ変わる」路線が続きそうだ。 長い商品名に最初は面食らったが、飲んでみると中身は素直な低カフェイン・ゼロカロリーの強炭酸ソーダで、拍子抜けするくらいまっとうな一本だった。次にどんな名前で店頭に並ぶのか、今から少し楽しみにしている。 関連記事: ノースショアの波からコンビニの棚へ、モンスターエナジー パイプラインパンチ · リアルゴールドはカフェインなしで元気を配る · 部活帰りの喉が覚えている黄色い一本、大塚食品 MATCH(マッチ) · ドデカミンはなぜ元気が出るのか、現場生まれの栄養炭酸

2026年9月21日 · 1 分 · 35 文字 · kingsworksub-jpg

190ml缶で飲み切る強炭酸、神戸居留地 スパークリングウォーター

スーパーや業務スーパーの棚でよく見かける「神戸居留地」の炭酸水。缶190mlという飲み切りサイズの強炭酸水「スパークリングウォーター プレーン」を、隅から隅まで見ていく。 富永貿易という会社と、「神戸居留地」ブランド 神戸居留地 スパークリングウォーター 強炭酸水 プレーン 190ml×30本Amazonで見る → 製造・販売元は富永貿易株式会社。1923年創業、1949年設立という長い歴史を持つ神戸の会社で、本社は神戸市中央区御幸通にある。「ファブレスメーカー」「商社」「OEM」の3本柱で食品・飲料を幅広く手掛けており、売上高は400億円を超える規模だ。「神戸居留地」はその関連会社である富永食品が1994年から展開しているソフトドリンクブランドで、炭酸水だけでなくコーラやサイダー、コーヒー、緑茶・烏龍茶・紅茶、果汁飲料、さらにはチューハイ・ハイボールといったアルコール飲料まで抱える、思いのほか懐の深いラインナップになっている。 ブランド名の「神戸居留地」は、明治期に神戸に置かれた外国人居留地(旧居留地)にちなんだ名前だと考えられる。旧居留地は西洋の近代都市計画を取り入れた地区として知られ、今も神戸を象徴するエリアのひとつだ。ただし、ブランド名の由来を公式に説明した一次情報は見当たらなかったので、この点は地名にあやかったブランド、という程度の理解にとどめておきたい。 中身は「水と炭酸」だけ 原材料表示を見ると、水と炭酸のみ。100mlあたりのエネルギーは0kcal、たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量もすべて0という、混じりけのないスペックになっている。糖もカロリーも気にせず飲めるプレーンな強炭酸水で、そのまま飲むのはもちろん、カクテルや焼酎、果汁飲料の割り材として使うことを前提に作られている商品だと感じる。炭酸ガス圧の具体的な数値や採水地までは公開情報として見つけられなかったが、「強炭酸」というだけあって、開けた瞬間の刺激はしっかりしている。 190ml缶という選択 この商品の個性は、なんといっても190mlという缶のサイズにある。500ml前後のペットボトルが主流の炭酸水市場の中で、あえて飲み切りサイズの缶を選んでいるのがポイントだ。一度開けたら炭酸が抜ける前に飲み切れるので、「気づいたら気の抜けた炭酸水が冷蔵庫に残っていた」という経験がある人には刺さる設計だと思う。ハイボールなら1〜2杯分にちょうどいい量で、ウイスキーや焼酎をソーダ割りにするときの割り材として使うと、無駄なく使い切れる感覚が気持ちいい。 一方で、まとめ買いをするとなると30本という本数はそれなりにかさばるし、缶を何度も開け閉めする手間は当然ペットボトルより増える。単価計算では大容量ペットボトルの方が割安になりやすい面もあるので、「毎回きっちり飲み切りたい派」か「まとめて作り置きしたい派」かで評価が分かれるところだろう。 炭酸の強さと味わい 神戸居留地 スパークリングウォーター 強炭酸水 プレーン 190ml×30本Amazonで見る → プレーンなので味の主張はほぼゼロで、評価のポイントは炭酸の強さと後味の軽さに絞られる。実際に飲んでみると、缶入りらしくしっかりとした刺激があり、ウィルキンソン タンサンのような定番の強炭酸水と比べても見劣りしない強さだと感じた。喉への当たりは強めだが、後味はすっきりしていて、変な癖が残らない。ハイボールの割り材として使うと、ウイスキーの香りを邪魔せずにガツンとした刺激を足してくれる印象で、割り材用途としての完成度は高いと思う。 なお、同じ「神戸居留地」ブランドには缶入りのハイボール(チューハイ)商品も別で存在する。名前が紛らわしいが、あちらは完成品のお酒であり、今回取り上げているのは糖もアルコールも入っていない無糖の割り材用炭酸水なので、混同しないよう注意したい。 パッケージと展開 同シリーズは350ml缶でも展開されており、プレーンのほかレモン味も用意されている。190ml缶はプレーン専用のようで、ペットボトルでの展開は見当たらなかった。缶飲料は炭酸が抜けにくく品質が保たれやすいというメリットもあり、190ml・350mlどちらも「缶で強炭酸を維持する」という設計思想が一貫している。 価格・現行性 Amazon.co.jpでは30本ケースが1,700円台からと、1本あたり60円前後で購入できる。価格比較サイトで見ると販売店によって価格差がそれなりにあり、公式オンラインショップでは定価から割引された価格で販売されていることもある。ふるさと納税の返礼品としても採用されているブランドで、2026年時点でも富永貿易の公式サイト・自社ECサイトの両方で現行商品として扱われており、販売終了やリニューアルの兆候は見当たらない。スーパーや業務スーパーでの店頭価格は1本50円前後からと、かなり手頃な部類に入る炭酸水だ。 派手さのない、素直な強炭酸水だと思う。味で語るタイプの商品ではないぶん、「缶で飲み切れる」「炭酸がしっかり強い」という2点をどう評価するかで満足度が決まる一本だ。ハイボールや酎ハイの割り材をあれこれ試している人には、一度試す価値のある選択肢だと感じた。 関連記事: 富士山の強炭酸水、地層が磨いた口当たり · 伊藤園 ミネラルストロングと、シリカという小さなこだわり · 強炭酸の元祖、ウィルキンソン タンサンが教えるシンプルさ

2026年9月20日 · 1 分 · 39 文字 · kingsworksub-jpg