北欧というよりは中欧寄りのブランドだが、店頭で見かけるとつい「北欧デザイン」と呼びたくなる佇まい。BODUM(ボダム)のカラフェ「DOURO(ドウロ)」を、日本酒の徳利として使う前提で見ていく。
デンマークのガラス輸入商から始まったブランド

BODUMは1944年、デンマーク・コペンハーゲンでPeter Bodumが興した会社だ。最初はガラス製品の輸入業だったというのが面白いところで、そこからバキュームコーヒーメーカーに出会ったのをきっかけに自社デザインへと舵を切っていく。1958年に発売した「SANTOS」が世界的な評価を得て、ブランドの名を一気に広めた。
今も語り草になっているのは、1983年にフレンチプレス「Cafetière Chambord」の権利を買い取ったことだろう。ここから生まれた「CHAMBORD」シリーズは、今でもBODUMの顔と言っていい製品ラインになっている。現在は創業者の息子Jørgen Bodumがトップに立ち、家族経営を保ったまま、スイスのデザインユニットPI-Designが全製品のデザインを手がける体制が続いている。「形は機能に従う」という素っ気ないくらいシンプルな設計思想が、コーヒー器具からキッチン雑貨まで一貫して流れているように感じる。
ドウロ渓谷のぶどう畑を写した溝模様
DOUROという名前は、ポルトガルのドウロ渓谷から取られている。ポートワインの産地として知られる、あの段々畑のぶどう園だ。本体表面に入った細かい縦溝は、その斜面に並ぶぶどうの木立をイメージしたものだという説明を複数の販売サイトで見かけた。デザイナー個人の名前までは公式ページに記載がなく、社内デザインチームによるものと考えるのが自然だろう。
実物を眺めると、溝の入り方が単なる装飾というより、光の反射で表情を変える仕掛けとして効いている。徳利然とした和風の道具立てとは対照的な、ヨーロッパのテーブルウェアらしい佇まいだ。
素材とサイズ — 口吹きの耐熱ガラス
素材は口吹き(マウスブロー)で成形された耐熱ボロシリケートガラス。容量360ml、サイズはおよそ幅7cm×奥行7cm×高さ16.1cmで、片手でしっかり握れる太さの胴回りをしている。電子レンジ対応・食洗機対応とうたわれており、手入れの面では扱いやすい部類に入る器だと思う。
耐熱ガラスとはいえ、直火にかけて燗をつけるタイプの道具ではない。熱源に近づけるならあくまで電子レンジ経由、というのがこの器の想定する使い方のようだ。
熱燗か、冷酒か
酒器の世界では、ガラス製は冷酒向き、陶器や磁器・錫は熱燗向きという整理がよくされる。熱の伝わり方や保温性を考えれば理にかなった住み分けで、DOUROもこの例に漏れず、本領を発揮するのは冷酒だと思う。透明なガラス越しに酒の色ととろみが見えるのは、陶器の徳利にはない楽しみ方だ。
「電子レンジ可」という表示がある以上、ぬる燗程度なら電子レンジで温めてから注ぐという使い方はできるはずだが、陶器の徳利のようにじっくり燗を保つ保温力までは期待しない方がいい。冷酒をきりっと涼しげに演出する道具、という位置づけで選ぶのがいちばんしっくりくる。
陶器の徳利と比べて
日本酒の酒器としては、陶器がいちばん幅広い温度帯に対応し、磁器や錫は熱燗向きの俊敏さを持つ、という住み分けがある。そこにガラス製のDOUROを置くと、「和の道具」というより「洋風のカラフェを日本酒用に転用する」という立ち位置がはっきりする。
実用面での違いは手入れのしやすさだ。食洗機にそのまま放り込める気軽さは、繊細な絵付けが施された陶器の徳利にはなかなか真似できない。北欧的というよりは中欧的な、装飾を削ぎ落としたミニマルな見た目も含めて、和洋どちらの食卓にも馴染む懐の深さがこの器の魅力だと感じる。
価格と購入先 — 今も現行のラインナップ

型番12132-10のDOUROは、BODUM公式サイト(日本・英国・米国・ドイツ・スイス・デンマークの各リージョン)に現在も掲載されており、生産終了の様子はない。価格は販路によって幅があり、日本の雑貨系ECサイトではおよそ2,000円台、海外のデザインストアでは20ドル台からという例が見つかった。Amazonでも取り扱いがあり、単品のカラフェとして購入できる。
DOUROシリーズには同じ溝模様をまとったお猪口サイズのグラスや二重壁タイプのタンブラーなど、サイズ違い・器種違いのラインナップが揃っている。徳利と揃いの盃を合わせて選ぶのも面白そうだ。
コーヒー器具のイメージが強いBODUMだが、ガラスの扱いにルーツを持つブランドだけあって、日本酒の徳利という異色の使い方にもきちんと説得力がある。ぶどう畑の溝模様越しに冷酒を注ぐ、という組み合わせの妙を楽しむための一本だと思う。
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