割り材といえばウィルキンソン、という空気が長らく続いていたところに、コカ・コーラシステムが「THE」を頭に付けて殴り込んできたのが「ザ・タンサン」シリーズだ。その中でもラベルレス・ケース販売専用という一風変わった売られ方をしている「カナダドライ ザ・タンサン ストロング」430ml×24本を、今回は隅から隅まで見ていく。
カナダドライというブランドの出自

カナダドライの歴史は意外と古く、1904年にカナダ・トロントの薬剤師ジョン・J・マクローリンが、シャンパンのような上品な辛口(dry)を目指してジンジャーエールを開発したのが始まりだ。1920年代の米国禁酒法時代には「お洒落なノンアルコール飲料」「カクテルの割り材」として一気に人気が広がり、世界的なブランドに育っていった経緯がある。その後何度か企業の売買を経て、現在は米国のKeurig Dr Pepper傘下のブランドになっている。
日本では1957年にサッポロホールディングスの前身にあたる日本麦酒と米カナダドライ社の提携でひっそり売り出されたのが最初で、1990年に日本コカ・コーラが販売権を取得してからは、コカ・コーラシステムがライセンス製造・販売する体制に切り替わった。ジンジャーエールのイメージが強いブランドだが、今回扱う「ザ・タンサン ストロング」はジンジャーエール系列とは別の、無糖・無香料のプレーンソーダウォーターのラインだ。
「ザ・タンサン」というシリーズの立ち位置
「ザ・タンサン ストロング/レモン」の初代は2018年3月に全国発売され、2019年3月には「より強い刺激・より持続する炭酸」を掲げてリニューアルしている。公式のキャッチコピーは「強炭酸は、おいしさで選ぶ時代へ。」――それまで炭酸水といえば酒の割り材という扱いが中心だったところに、単独の飲み物としても成立する強炭酸を、という狙いが透けて見える。コカ・コーラシステムとしては歴代最高クラスのガスボリュームを謳っているらしく、炭酸ガスそのものまで専用フィルターで濾過して「クリスタルクリアな泡」を実現し、酸味を抑えるためpHにもこだわったと説明されている。
味の面では無糖・ゼロカロリー・ノンカフェインで、原材料はクエン酸ナトリウムなどごくシンプル。飲み比べてみると、ウィルキンソン タンサンよりわずかに炭酸の粒が細かく、刺激も心なしか穏やかに感じる。その代わり微量の塩味がふわっと後を追いかけてくるような印象があり、キリッとした角のあるウィルキンソンに対して、こちらは少し丸みのある強炭酸という棲み分けに見える。2018年の投入経緯を見ても、業界的には「ウィルキンソンに対する自社ブランドの本格対抗馬」という文脈で語られることが多いようだ。
ラベルレス・ケース販売限定というちょっと変わった売り方
今回のASIN(430ml×24本)は2020年8月3日に発売されたラベルレスバージョンで、綾鷹・爽健美茶に続いてコカ・コーラシステムが3ブランド目としてラベルレス化した製品にあたる。通常の490ml有ラベル版とは別物で、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングといったオンライン通販のケース販売専用という扱いになっている。コンビニやスーパーの店頭には並ばないので、見かけたことがない人がいても不思議はない。
ラベルレス化の理由は環境配慮――ラベルを剥がす手間やプラスチックごみを減らす狙いに加えて、コロナ禍で伸びたネット通販のまとめ買い需要に対応する意味合いもあったようだ。通常はラベルに記載する原材料表示などの法定表示は、外箱のダンボールに印刷することで対応している。発売時の希望小売価格は税別2,640円/24本ケースだったとのことで、今のAmazon実勢価格(1,300円前後)と比べるとかなり値下がりしていることになる。
割り材としての実力

公式サイトでは有ラベル版の490mlについて、カシス&グレープのスカッシュやオレンジ&ブランデーのオレンジスカッシュといったカクテルレシピが紹介されていて、直飲み訴求だけでなく割り材としての使い道もちゃんと意識されている。香りのついた「レモン」タイプはウイスキーのハイボールとの相性を推す声が目立つが、無香料の「ストロング」はクセがないぶん、レモンサワーや酎ハイ、カクテル全般にまんべんなく使える汎用型の割り材だと感じる。強炭酸が抜けにくい印象もあり、作り置きしたハイボールが時間が経ってもへたりにくいのはありがたいポイントだ。
価格・入手性
Amazonでは430ml×24本のケースが1,300円前後で扱われていて、これは主要な強炭酸水の中でもかなり安い部類に入る。楽天市場やYahoo!ショッピング、価格.com掲載店を見ると同じ規格で1,700円台から2,700円台まで幅があり、まとめ買いならAmazonが有利なことが多い印象だ。48本ケースのバリエーションも存在するので、消費ペースに応じて選べる。店頭では手に入らない分、切らしたときにすぐ買い足せないのは唯一の弱点かもしれない。
類似の強炭酸プレーンソーダとの違い
ウィルキンソン タンサンは炭酸水市場で長年トップを走ってきた老舗ブランドで、粒がやや大きめでガツンとした刺激が持ち味。サンガリア系の強炭酸水は天然水ベースで刺激が比較的マイルドめに作られていて、強炭酸が少し苦手な人にも向いている。その中間くらいに位置するのがこの「ザ・タンサン ストロング」で、刺激はしっかりありつつも角が丸く、微量の塩味で味に輪郭を持たせているのが個性だと思う。どれが一番良いかは好みが分かれるところで、実際に飲み比べてみるのが一番早い。
ラベルレスでケース販売限定という、店頭ではまず出会えない売られ方をしている一本だけに、知らない人もまだ多そうだ。ウィルキンソン一強だった強炭酸水の棚に、静かに割って入ってきた実力派として覚えておいて損はないと思う。
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