お酒を飲まない日や、運転して帰る日の外食で、ノンアルコールのカクテルを頼むことが増えた。ミントとライムがたっぷり入ったグラスはたしかにおいしい。ただ、伝票を見ると1杯800円や1,000円がふつうで、中身を思い浮かべると少し考えてしまう。炭酸水と果汁と砂糖、それに葉っぱが数枚。材料費だけなら100円もかからない飲み物だ。

お店の値段には、技術や雰囲気や片付けの手間が含まれているので、高いこと自体に文句はない。それでも、毎週のように頼むなら家で作れたほうがうれしいと思う。この記事では、家にある炭酸水と果汁、鍋で作る簡単なシロップ、ベランダや店先で手に入るハーブだけで組めるモクテルを、分量付きで6杯まとめる。特別な道具はいらない。計量にはキッチンの大さじ(15ミリリットル)と小さじ(5ミリリットル)を使えば足りる。

モクテルの骨組みは、甘さと酸味と炭酸の3つ

モクテルは「まがいもの」を意味する英語のモックとカクテルを合わせた言葉で、お酒を使わずにカクテルの形を借りた飲み物を指す。言葉自体は20世紀の前半から使われているが、ここ数年で急に目にする機会が増えた。英語圏では、あえてお酒を控える暮らし方を楽しむ人が若い世代を中心に増えていて、バーのメニューにもノンアルコールの欄が当たり前に並ぶようになった。日本でも、ノンアルコールビールの棚が年々広がっているのを見ると、同じ流れの中にいるのだと感じる。

作り方の骨組みは単純で、多くのモクテルは甘さ、酸味、炭酸の3つでできている。甘さはシロップや果汁、酸味はレモンやライムの果汁、そこへ炭酸水やジンジャーエールを注いで背を伸ばす。ここにミントやローズマリーのような香りを足すと、ぐっとお店の味に近づく。

いちばん大事なのは、甘さと酸味の釣り合いだと思う。砂糖と水を同じ重さで溶かしたシロップを使うなら、シロップとかんきつ果汁を同じ量にするのが出発点になる。大さじ1杯ずつ、つまり15ミリリットルずつ合わせたものに、炭酸水を90〜120ミリリットル足す。これがほとんどのモクテルの土台で、あとは好みで甘さか酸味のどちらかを小さじ1杯ずつ動かしていけばいい。

お酒の入ったカクテルでは、アルコールの苦みや熱さが甘さを引き締めてくれる。モクテルにはその支えが無いので、同じ配合をそのままなぞると甘く感じやすい。最初は甘さを控えめにして、味見をしてから足すほうが失敗が少ないと感じる。

シロップは砂糖と水を1対1で、ハーブは火を止めてから

甘さの元になるシロップは、市販品を買ってもいいが、自分で作るのも簡単だ。グラニュー糖100グラムと水100ミリリットルを小鍋に入れ、中火にかけて砂糖が溶けきったら火を止める。沸騰させる必要はない。冷めたら煮沸した瓶に移して冷蔵庫に入れておけば、1か月ほど使える。

砂糖と水を2対1にした濃いめのシロップもある。こちらは水分が少ないぶん日持ちがよく、冷蔵で2か月ほどもつ。甘さは1対1のおよそ1.35倍で、1対1のシロップ15ミリリットルの代わりにするなら10ミリリットルが目安になる。半量ではなく3分の2くらい、と覚えておくと置き換えで迷わない。この記事の分量は、扱いやすい1対1で統一している。

シロップに香りを移すと、炭酸水で割るだけで一杯が完成する。ローズマリーなら、1対1のシロップを作って火を止めたところへ枝を3〜4本入れ、ふたをして15〜30分置く。長く置くほど香りが強くなるので、途中で味見をしてちょうどいいところで枝を引き上げる。ミントやバジルも同じ方法で使える。葉物は煮立てると色も香りも落ちるので、熱いうちに入れて、火にはかけないのがこつだ。

生姜のシロップは少し手間をかける。皮をむいて薄切りにした生姜100グラムを、砂糖100グラム、水100ミリリットルと一緒に鍋に入れ、軽く沸いたら弱火にして、ふたをせず20分ほど煮る。こし器でこして冷ませばできあがりで、冷蔵で3週間ほどもつ。これを炭酸水で割ると、市販品よりずっと辛い、自家製のジンジャーエールになる。辛さは生姜の量と煮る時間で調整できるので、何度か作るうちに自分の好みの辛さが見えてくると思う。

ミントとライムで組む、バージン・モヒート

ミントの枝とライムが入ったバージン・モヒートと、隣に置かれたオレンジ色のジュース
手前がミントとライムのバージン・モヒート。氷と葉を詰め込んでから炭酸水を注ぐ(クリックで炭酸水のAmazonページへ)
Photo: Aditijuneja2023 / CC BY-SA 4.0

最初の一杯は、モクテルの代表格ともいえるバージン・モヒートにしたい。キューバ生まれのモヒートから、ラムだけを抜いた飲み物だ。材料はライム、ミント、シロップ、炭酸水の4つで、どれもスーパーで手に入る。

バージン・モヒート(1杯)

  • ライム果汁 20ミリリットル(ライム半個分)
  • 1対1のシロップ 20ミリリットル
  • ミントの葉 10〜12枚
  • 炭酸水 100ミリリットル

グラスにミントの葉とシロップ、ライム果汁を入れ、すりこぎやスプーンの背で葉を軽く3〜4回押す。ここで力を入れすぎないことが大切で、葉を細かくちぎってしまうと、香りより先に青臭さや苦みが出てくる。葉の表面に小さな傷を付けて、香りの油を引き出すくらいの気持ちで十分だ。

次に、グラスの縁まで氷を詰める。できれば砕いた氷のほうが、冷たさが長く続いて見た目もそれらしくなる。最後に冷えた炭酸水を静かに注ぎ、マドラーで底から1回だけ持ち上げるように混ぜる。ミントの枝とライムの薄切りを差せば、お店で出てくるものとほとんど変わらない見た目になると思う。

ライムが手に入らない季節は、レモンでも作れる。酸味の角が少し丸くなり、香りは穏やかになるが、これはこれで飲みやすい。炭酸水の代わりにジンジャーエールを使うと、甘さと生姜の辛さが加わって、少し大人びた味になる。その場合はシロップを10ミリリットルに減らすと、甘くなりすぎない。

押しつぶしすぎない、ミントとかんきつの扱い

金属のカップの中で、桃とミントの葉をマドラーで押しつぶしているところ
桃とミントをマドラーで押しているところ。葉は軽く押すだけで、細かくちぎらない
Photo: Dinner Series / CC BY 2.0

ハーブや果物をグラスの中で押しつぶす作業は、カクテルの世界ではマドルと呼ばれる。専用のマドラーがあると楽だが、木のすりこぎや、木べらの柄の端でも代わりになる。金属のスプーンは葉を切ってしまいやすいので、使うなら背の丸いところで押すようにしたい。

ミントのような柔らかい葉は、数回押すだけで香りが立つ。一方、桃やいちご、きゅうりのような果物や野菜は、しっかり押しつぶして果汁を出したほうが味がなじむ。同じグラスに両方入れるなら、先に果物だけをつぶし、最後にミントを加えて軽く押す、という順番にすると、葉が傷みすぎない。

かんきつ果汁は、できれば飲む直前に搾りたい。市販の瓶入りレモン果汁も便利だが、搾りたてと比べると香りが平板で、酸味だけが前に出る印象がある。ライムやレモンは、搾る前に台の上で手のひらで転がしておくと、果汁がたくさん出る。半分に切ったものを冷蔵庫に置くなら、切り口にラップをぴったり貼っておけば翌日まで香りが残る。

グレナデンとジンジャーエールのシャーリー・テンプル

氷が浮かんだ赤いシャーリー・テンプルのグラスと2本のストロー
グレナデンの赤がグラスの底に沈んだシャーリー・テンプル(クリックでジンジャーエール辛口のAmazonページへ)
Photo: Marie from Malang, East Java, Indonesia / CC BY-SA 2.0

子役として人気を集めた女優の名前が付いたシャーリー・テンプルは、もともと子どもがお酒の席で飲めるように作られた飲み物だといわれている。ジンジャーエールにグレナデンシロップを落とすだけの簡単さで、赤い色がグラスの底からゆっくり広がっていく様子がかわいらしい。

シャーリー・テンプル(1杯)

  • グレナデンシロップ 10ミリリットル(小さじ2)
  • ライム果汁 10ミリリットル(小さじ2)
  • ジンジャーエール 130ミリリットル

氷を入れた細長いグラスにグレナデンとライム果汁を入れ、ジンジャーエールを注いで軽く混ぜる。缶詰のさくらんぼを1粒のせれば、昔の喫茶店のような雰囲気になる。ジンジャーエールは甘口でも辛口でもよいが、辛口を選ぶと生姜の刺激が甘さを引き締めて、大人でも飲み飽きない味になると感じる。

グレナデンは、本来はざくろの果汁と砂糖で作るシロップだ。名前もフランス語でざくろを意味する言葉から来ている。ところが、店頭に並ぶ商品の多くは、ざくろをほとんど使わず、香料と着色料で赤い色と甘酸っぱい風味を作っている。これは最近の話ではなく、100年以上前からそうした商品が出回っていたらしい。

気になるなら、自分で作るのも難しくない。100パーセントのざくろジュース100ミリリットルと砂糖100グラムを小鍋で温めて溶かし、レモン果汁を少し加えれば、色は少し落ち着いているが、果物らしい酸味のあるグレナデンができる。冷蔵で2週間ほどを目安に使い切りたい。

エルダーフラワーとりんごのフィズ、ほか4杯

乾燥レモンの薄切りを添えた、淡い黄色のりんごとエルダーフラワーのフィズ
りんごとエルダーフラワーのフィズ。淡い色と花の香りで、食事にも合わせやすい
Photo: Andy Li / CC0

残りの4杯は、ここまでの考え方を応用したものだ。どれも「甘さと酸味を同量、そこへ炭酸を3〜5倍」という骨組みから大きく外れていない。

りんごとエルダーフラワーのフィズ(1杯)

  • りんごジュース(にごりタイプ) 90ミリリットル
  • エルダーフラワーコーディアル 15ミリリットル
  • 炭酸水 90ミリリットル
  • ミントの葉 3枚

エルダーフラワーは、ヨーロッパでよく使われるにわとこの花で、マスカットに似た甘い香りがある。濃縮した飲み物、いわゆるコーディアルとして売られていて、輸入食品の店やネットで手に入る。りんごジュースの甘さがあるので、シロップは足さなくていい。グラスにミントを入れて軽く押し、りんごジュースとコーディアルを注いで氷を入れ、炭酸水で満たす。りんごの酸味と花の香りが合わさって、甘すぎず、和食の席にも出しやすい一杯になる。

グレープフルーツとローズマリーのソーダ(1杯)

  • グレープフルーツ果汁 60ミリリットル
  • ローズマリーのシロップ 15ミリリットル
  • 炭酸水 90ミリリットル
  • 塩 ひとつまみ

グレープフルーツのほろ苦さに、ローズマリーの樹脂のような香りがよく合う。ほんの少しの塩は、苦みを和らげて果汁の甘さを引き出す役目をする。入れすぎるとしょっぱくなるので、指先でつまめる程度、ごく少量にとどめたい。

自家製ジンジャーのモスコミュール風(1杯)

  • ライム果汁 15ミリリットル
  • 生姜のシロップ 20ミリリットル
  • 炭酸水 120ミリリットル

モスコミュールからウォッカを抜き、市販のジンジャービアの代わりに自家製の生姜シロップを使う形だ。生姜の辛さがしっかり効くので、甘い飲み物が苦手な人でも満足しやすい。銅のマグがあれば、冷たさが手に伝わって気分も上がる。

ライム・リッキー(1杯)

  • ライム果汁 30ミリリットル
  • 1対1のシロップ 15ミリリットル
  • 炭酸水 120ミリリットル

アメリカで100年以上前から飲まれてきた、酸っぱさが主役の一杯だ。ここだけはわざと酸味を倍にしていて、甘さは控えめ。揚げ物や脂の多い料理と一緒に飲むと、口の中がすっきりする。甘さが足りなければ、シロップを小さじ1杯ずつ足して調整すればいい。

このほか、好みの果物のシロップ30ミリリットルを炭酸水180ミリリットルで割るだけの「イタリアンソーダ」も、子どもと一緒に楽しめる簡単な一杯として覚えておくと便利だと思う。

炭酸を逃がさない、冷やし方と注ぎ方

家で作ったモクテルがお店のものより物足りなく感じるとき、原因はたいてい炭酸の弱さにある。炭酸水の泡は、温度が上がるほど、そして揺さぶられるほど抜けていく。ここでは、ガスを逃がさないための決まりを4つにまとめておく。

1つ目は、材料もグラスも冷やしておくことだ。二酸化炭素は冷たい液体ほどよく溶けているので、常温の果汁に冷えた炭酸水を注ぐと、その瞬間に泡が勢いよく抜けてしまう。果汁やシロップは冷蔵庫に、グラスは冷凍庫に10分ほど入れておくだけで、仕上がりの刺激がはっきり変わる。

2つ目は、炭酸は最後に入れることだ。果汁やシロップ、ハーブを先にグラスで合わせ、氷を入れてから、飲む直前に炭酸水を注ぐ。作り置きをしたいときも、炭酸以外の部分だけをピッチャーで合わせて冷やしておき、注ぐときに1杯ずつ炭酸水を足すといい。

3つ目は、炭酸を入れたあとに振らないことだ。カクテルといえばシェーカーを振る姿を思い浮かべるが、炭酸を入れて振ると、ふたが飛んだり中身が噴き出したりするうえ、ガスもほとんど抜けてしまう。果汁や果物をしっかり冷やして混ぜたいときは、炭酸を入れる前の材料だけをシェーカーや密閉瓶で振り、グラスに移してから炭酸を注ぐ。

4つ目は、注ぎ方と混ぜ方だ。炭酸水は氷に直接当てず、グラスの内側の壁を伝わせるように静かに注ぐ。混ぜるときはマドラーをグラスの底まで差し込み、1回か2回、下から持ち上げるように動かすだけで十分だ。ぐるぐるかき回すと、せっかくの泡がすぐに消えてしまう。

炭酸水そのものを強めに選ぶのも一つの手だ。強炭酸をうたう炭酸水は、果汁やシロップで薄まっても刺激が残りやすい。家庭用の炭酸水メーカーがあれば、割り材にする日だけ強めに作るという使い分けもできる。

少しずつそろえれば、冷蔵庫がバーの棚になる

ここまでの6杯は、炭酸水とライム、砂糖、ミントがあれば半分以上が作れる。そこへ、ジンジャーエール、グレナデン、エルダーフラワーコーディアル、自家製の生姜とローズマリーのシロップを少しずつ足していくと、気分や料理に合わせて選べる一杯が増えていく。

すべてを一度にそろえる必要はないと思う。最初はバージン・モヒートだけを何度か作って、甘さと酸味の釣り合いを舌で覚えるのがいちばんの近道だ。シロップとライム果汁を同量にした基本の味を知っておけば、そこから先は、手元にある果汁やハーブを入れ替えるだけで新しい一杯が組める。

お店で1,000円の一杯を頼む楽しみはそのままに、家では、飲みたいときに好きなだけ、自分の好みに寄せた一杯を作る。お酒を飲まない夜が、少しだけ待ち遠しくなるはずだ。

関連記事