富山・高岡に、曲がる金属で酒器を作る鋳物メーカーがある。能作の「本錫100%」シリーズから、ぐい呑みと片口小のセットを取り上げる。


高岡が育てた、曲がる金属

能作 本錫100%酒器セット
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能作の創業は1916年。高岡銅器という400年続く鋳物産地で、仏具や茶道具、花瓶を手がける工房として始まった会社だ。転機になったのは2003年、世界初とうたう「100%純錫」のテーブルウェアラインを立ち上げたこと。普通、錫の器はアンチモンや銅などを混ぜた合金にして硬さを持たせるものだが、能作はあえて硬化材を一切加えず、純度100%に近い錫のまま鋳造する道を選んだ。

その結果生まれたのが、手で曲げて形を変えられるほど柔らかい金属という、他に類を見ない特性だ。手のひらで押して器の形を変えられる「KAGO」シリーズが看板商品になっているのも、この「柔らかさを弱点ではなく個性にする」という発想から来ている。今回取り上げるぐい呑み・片口セットも、同じ本錫100%の系譜にある器だ。

片口とぐい呑み、それぞれの実力

片口小はH55×W128×D77mmほど、容量は195cc前後。ぐい呑みは1個あたり90cc前後で、手に収まるサイズ感になっている。どちらも化粧箱入りで、贈り物として渡しても恥ずかしくない仕立てだ。

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能作の直販サイトでは片口小の単品や、片口小にぐい呑み2個を組み合わせたセットが定番として並んでいて、今回のような「片口1個+ぐい呑み1個」という組み合わせは、正規取扱店が独自に組み替えた構成のようだ。中身自体は能作の本錫100%シリーズそのものなので、素材や作りに対する不安はない。

手入れは、思ったより神経を使う

錫は柔らかい金属なので、扱いには多少の慣れが要る。強く握ったりぶつけたりすると簡単にへこむし、表面にも傷が入りやすい。食器洗浄機・乾燥機は使えず、手洗いしてすぐに柔らかい布で水気を拭き取るのが基本になる。

放っておくと酸化して黒っぽい斑点(いわゆる曇り・変色)が出てくるのも錫の性質で、これは不良ではなく素材の特徴だという。気になったら重曹と中性洗剤を練ったペーストで優しくこすればある程度は戻せるらしいが、金属磨き粉やスチールウールでゴシゴシやるのは厳禁。ここは正直、扱いやすさよりも「素材と付き合う手間」を楽しめるかどうかにかかっている道具だと思う。

酒器としての実力

錫の器で飲むと酒がまろやかになる、という話は古くから言われている。イオン効果で角が取れる、熱伝導の良さで冷酒がキンと冷えたまま楽しめる、抗菌性があるので酒が傷みにくい、といった具合だ。実際、錫は熱の伝わりが陶器よりずっと速いので、冷蔵庫で1〜2分冷やすだけでもしっかり冷たくなる感覚はある。

ただ、味がまろやかになるという部分は科学的に完全に立証された話ではなく、あくまで長年語り継がれてきた経験則に近い。個人的には、金属特有のひんやりした口当たりと軽い清涼感が、冷酒をきりっと引き締めてくれる感じが気に入っている。過度な期待はせず、素材の面白さとして楽しむくらいがちょうどいいと思う。

価格・現行性

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実勢価格はAmazon.co.jpで11,000円台。能作の直販サイトでは、片口小単体が7,000円台、片口小+ぐい呑み2個のセットが14,000円台〜と、価格帯は近い。錆びにくく変形しにくいという錫の性質になぞらえて、結婚10周年を祝う「錫婚式」の贈り物として能作自身が紹介しているくらいで、還暦祝いや退職祝いの品としてもよく選ばれているブランドだ。

能作は現在も高岡の本社工場でこのシリーズを作り続けていて、廃番になった様子もない。片口・ぐい呑みという基本の組み合わせは、シーズンごとの限定デザインとは違って長く定番であり続けそうな器だと思う。


曲がるほど柔らかい金属を、あえてそのまま器にしてしまう発想がおもしろい。扱いには気を遣うが、その手間ごと楽しめるなら、晩酌の道具として長く付き合っていける一組だと思う。

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