Focusriteは自社サイトで、Scarlettシリーズを「世界でいちばん売れているオーディオインターフェース」と謳う。その言葉に見合う中身なのか、Focusrite Scarlett 2i2(4th Gen)を隅から隅まで見ていく。
筐体・外観・ビルド品質

まず外見から。赤いアルマイト加工のアルミ筐体で、サイズは180×117×47.5mm、重さ595g。天面にノブやボタン類を一切置かない設計で、周囲を金属筐体に覆われ上部にノブやボタンが無いおかげで、鞄に放り込んでも不用意に設定が動く心配がない。3rd Genからの変更点として、マイク入力のXLR端子が背面に移動し、前面はTRSのみのコンボジャックになった。地味な変更だが、配線がすっきりする実用的な改善だと思う。
プラスチック部品は以前より増えた印象だが、持った質感そのものは依然としてしっかりしていて安っぽさは感じない。入力ノブを囲む「Gain Halo」というLEDリングも新採用で、レベルが一目で分かるのはありがたい。
アナログ入力とプリアンプ
次に、この製品の心臓部といえるプリアンプまわり。コンボ入力(XLR/TRS)は2系統、ゲインレンジはマイク/ライン入力で69dB、楽器入力で62dBとされ、3rd Genの56dBから引き上げられている。
注目すべきは「Air」モードだ。ボタン一つで2段階(Presence / Presence + Harmonic Drive)を切り替えられ、後者はFocusrite上位機のISAトランスフォーマー・プリアンプの質感を模した倍音を加える機能らしい。4th Genではこのカーブに手が入り、以前より使い勝手の幅がわずかに広がったように感じる。
初心者に優しいのが「Auto Gain」と「Clip Safe」の2機能。前者はオンにすると青く点灯するとともに入力レベルを10秒間チェックして最適なゲインを自動設定し、後者は入力信号を1秒間に最大96000回もチェックして、クリッピングの恐れがあるとゲインを自動的に調整してくれる仕組みだ。ただし万能ではなく、どちらの機能もよく働く一方で、Clip Safeはリアルタイムで大きくゲインを変えてしまうことがあり、少し気になった。ゲイン設定という、人間が長年培ってきた勘を機械に譲り渡す時代が、静かに来ているらしい。
モニタリング・出力
ダイレクトモニターはオン/オフのトグルのみで、ミックスバランスの調整はハードウェア側になく、Focusrite Control 2というソフトウェア側で行う設計だ。このソフトにモニタリング用のミキサーが無いのは正直物足りなく、モニターミックスのそれ以外の部分を調整しようとすると、少しイライラさせられる。
一方でヘッドホンアンプの評判は良く、内蔵のヘッドホンアンプは称賛に値する出来で、音量は十分すぎるほど出るのでパワー不足に悩まされることはなさそうだ。メイン出力はバランス1/4インチTRSが2系統、専用の出力レベルノブも備える。
接続性
USB-C接続、USB 2.0のバスパワー駆動(消費900mA)。電源が不安定な環境向けに、予備の給電用USBポートも用意されている。Windows/Mac双方に対応し、クラスコンプライアント動作によりUSB-C接続のiPadでも直接使える(Lightning接続のiOSデバイスは別途アダプターが必要)。
弱点として気になるのがMIDI端子の不在で、Universal Audio Volt 2との対抗軸としてよく挙げられるポイントでもある。電子楽器を使う人にとっては、地味に効いてくる差だろう。
スペック
変換部は24bit/192kHzに対応、コンバーターはFocusrite上位機のRedNetシリーズ由来とされる。ダイナミックレンジはライン出力120dB、マイク入力116dB(Aウェイト)、ライン入力115.5dB。THD+Nはおよそ-100dB(約0.001%)とされ、実用上は非常にクリーンだと感じる。レイテンシについても、ほぼ気にならない水準だと思う。
付属ソフトウェア・バンドル
付属ソフトも侮れない。Ableton Live Lite、Pro Tools Intro+(3ヶ月)、Cubase LEに加えて、「Hitmaker Expansion」という名のバンドルにAntares Auto-Tune Access、Softube製アンプシミュレーター、Relab LX480 Essentialsリバーブ、XLN Audio Addictive Drums 2 / Addictive Keys、MASSIVEシンセまで詰め込まれている。さらにFocusrite Red Plug-in SuiteやMelodyne Essential、Splice Soundsの3ヶ月分、Landr Studioのマスタリングクレジットまで付いてくるというから、本体価格を考えると明らかに割に合っていない気がする。導入は「Easy Start」というWebツールがドライバのインストールからソフトの引き換えまで一気通貫で案内してくれる。
実使用での評判・弱点
総じて評価は高く、強化されたプリアンプ、ヘッドホンアンプ、コンバーターが大きな売りだと感じる。ただしMIDI端子の不足とモニターミキシングの選択肢の限られている点は、電子楽器を使うミュージシャンにとって弱みになりうるとも思う。競合としてはUniversal Audio Volt 2(MIDI端子・ヴィンテージモード搭載)やSteinberg UR22Cがよく引き合いに出されるが、後者の32bit変換については、実際の性能というより宣伝文句が先行している印象を受けた。
価格・現行性

2026年9月時点でも4th Genが現行の最新世代で、5th Genの発表は確認できなかった。国内実売はおよそ28,300円〜29,000円。エントリー機としては、機能を詰め込みすぎではないかと心配になるくらいの内容である。
一本の機材をここまで丁寧に見たのは初めてで、比較記事とはまた違う面白さがあった。細部まで作り込まれた設計思想には素直に感心するし、価格を考えると納得のいく完成度だと思う。次に機材を選ぶときも、これくらいの粒度で調べてから決めたい。
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