氷を閉じ込めて薄めない、東洋佐々木ガラス カラフェ・バリエーション
冷酒を氷で冷やすと、どうしても味が薄まる。その当たり前の悩みに、ガラスの構造だけで答えを出した器がある。東洋佐々木ガラスの「カラフェ・バリエーション」徳利(氷ポケット付、品番61048DV)を見ていく。 氷を入れるのに、酒には触れさせない 東洋佐々木ガラス カラフェ・バリエーション 徳利(氷ポケット付)360ml(61048DV)Amazonで見る → この徳利のいちばんの見せ場は、胴の中央に空いた大きな空洞だ。ここに氷を入れるのだが、そのポケットは容器の内側に向かって入り組んだ形状になっていて、酒そのものには氷が直接触れない。氷はあくまでガラスの壁を介して酒を外側から冷やす役目に徹し、溶けた水も外にこぼれないよう下方に向かって空洞が続く造りになっている。 「氷で冷やすと薄まる」という冷酒の永遠の悩みを、添加物でも保冷剤でもなくガラスの成形だけで解決しているのが気持ちいい。仕組みを知ってから使うと、ただの装飾だと思っていた胴のふくらみが急に機能パーツに見えてくる。 セミレッドクリスタルという素材 素材はセミレッドクリスタルガラス。クリスタルガラスは酸化鉛や酸化カリウム・酸化バリウムなどを一定量含むガラスの総称で、含有率によってフル・セミといった区分がある。通常のソーダガラスより屈折率が高く、光を受けたときの透明感と輝きが違う。氷ポケットの部分にだけ淡いブルーの色ガラスを差し込んでいるのも効いていて、冷たさを視覚的に伝えるデザインになっていると思う。 成形はハンドメイド。機械成形と手作業の両方の設備を持つ工場で作られているという説明を見かけたが、この徳利は職人の手仕事によるラインの一本だそうだ。量産品にはない、胴の丸みの微妙な揺らぎがそれを物語っている。 サイズと容量 — ちょうど2合 容量は360ml。日本酒の単位でいうと1合=180mlなので、ちょうど2合分が入る計算になる。サイズはΦ46(最大106)×高さ137mmで、重さは約220g。一人で静かに飲むにも、二人でつまみながら飲むにも収まりのいい量だと感じる。 同じシリーズには180ml前後の小サイズもあるようで、来客の人数や飲む量に応じてサイズを選べるのもありがたい。 手入れと温度帯 — 食洗機OK、加熱はNG 食器洗浄機には対応している一方、電子レンジ・オーブン・熱湯を使った加熱には対応していない。氷を使う前提の器なので当然ではあるが、燗をつける道具ではなく、冷酒専用と考えたほうがいい。 ガラス製の酒器全般に言えることだが、急激な温度変化には弱い。冷蔵庫でよく冷やしてから使い、洗浄後は自然乾燥させる、という程度の気遣いで十分長く付き合えると思う。 明治から続く、ガラスの老舗の合流点 東洋佐々木ガラス カラフェ・バリエーション 徳利(氷ポケット付)360ml(61048DV)Amazonで見る → 東洋佐々木ガラスという社名は2002年に生まれたもので、そこには2つの流れが合流している。ひとつは1878年創業の東洋ガラス、もうひとつは1902年に東京・神田で石油ランプの販売から始まった佐々木硝子だ。佐々木硝子は戦後にガラス食器の卸販売へ軸を移し、東証一部にまで名を連ねた時期もあったが、平成に入って経営再建を経験している。その佐々木硝子とハウスウエア事業を担っていた東洋ガラスが統合して、今の社名になった。 本社と工場は千葉県八千代市。1967年には国内初の口部強化ガラス「ハードストロング」を世に出した実績もある会社で、業務用グラスの世界ではよく知られた存在だ。この酒器シリーズでは以前、同社が製造を手がける「柳宗理デザイン 清酒グラス」を取り上げたが、あの脚付きグラスとこの氷ポケット徳利は、実は同じ工場から生まれている。片方は工業デザイナーの名を冠したロングセラー、もう片方は機構そのものが主役という、対照的な個性の出し方が面白い。 価格と購入先 — 現行のシリーズ品 価格は店舗によって幅があり、定価5,600円前後から、セール時には4,400円程度まで下がる例も見かける。取り扱いは業務用食器店や雑貨系のオンラインショップが中心で、Amazonでも購入できる。生産終了や後継機への切り替えを示す情報は見当たらず、現行のシリーズ品として問題なく選べる状態だ。 化粧箱の有無は店舗によって表記が異なるようなので、贈り物として使う場合はギフト対応の可否を購入前に確認したほうが安全だと思う。 氷を入れるだけで、酒は薄めずに冷やす。仕組みとしては単純なのに、実際に手に取ると「よくこんな形を思いついたな」と感心してしまう。デザインの美しさと機能が一致している道具は、使うたびに少し得意げな気分になれる。晩酌の定番になりそうな一本だ。 関連記事: 東洋佐々木ガラスの片口 冷酒カラフェ、注ぎ口に宿る千三百年の知恵 · 柳宗理の清酒グラスは、てのひらの形から生まれた