デスク裏の配線整理はケーブルトレーから。電源と信号の通り道を分けて、雑音と埃を減らす

机の下をのぞき込むと、電源コード、USBケーブル、スピーカーケーブル、ACアダプターが床の上でひとかたまりになっている。掃除機をかけようとすると、どこかのケーブルを吸い込みそうで手が止まり、結局その一角だけ埃が積もっていく。制作机を何年か使っていると、たいていの人がこの状態に行き着くと思う。 以前、電源タップを替えてもハムノイズが消えない理由という記事で、機材を1本のタップにまとめること、電源とオーディオのケーブルの通り道を分けることを書いた。今回はその続きとして、机の裏という具体的な場所で、どうやって通り道を分けるかを扱う。主役はケーブルトレーと呼ばれる、机の天板の裏に取り付ける細長い受け皿だ。 ケーブルトレーを付けると、床からケーブルがほとんど消える。電源タップが床から天板の裏へ上がり、壁のコンセントへ降りる線は1本だけになる。掃除機は机の下を素通りでき、足元に何かが引っかかる感覚もなくなる。そして、電源の線と音の線を左右に分けて這わせておけば、雑音の入り口がひとつ減る。年末の大掃除は、この作業をまとめてやるのにちょうどいい機会だと思う。 床に垂れたケーブルが、埃と雑音の両方を集める 整理する前の机の下。天板の裏から何本もの線が垂れ、ACアダプターは床に置かれたままになっているPhoto: hansbrastad / CC BY 2.0 床にケーブルが散らばっていると困ることは、大きく分けて3つある。ひとつは埃だ。床に近いほど埃は多く、ケーブルが重なったところやACアダプターの影には、掃除機の届かない吹きだまりができる。電源タップを床に直置きしていると、差し込み口のまわりにもその埃が寄ってくる。 2つ目は、プラグとコンセントのすき間にたまった埃が湿気を吸い、そこを電気が流れて発火するトラッキングという現象だ。機器の電源を切っていても、プラグが差さっていれば起こりうる。机の下は人の目が届かず、冬は加湿器の湿気もこもりやすいので、条件がそろいやすい場所でもある。 3つ目が雑音だ。床の上で電源コードとオーディオケーブルが同じ方向に長く寄り添っていると、電源コードのまわりにできる磁界がオーディオ側に移り、50Hzや60Hzのうなりの原因になる。ケーブルが絡んだ状態では、どの線がどこを通っているかが分からないので、雑音が出たときの切り分けにも時間がかかる。ケーブルトレーで線を床から上げ、通り道を決めておくことは、この3つをまとめて減らす方法になる。 机の裏を、電源の側と信号の側に分ける 天板の裏に吊り下げた針金のケーブルトレー。脚に沿って下ろす線は、面ファスナーのバンドで留めてあるPhoto: J Dueck / CC BY 2.0 トレーを買う前に、机の裏のどこに何を通すかを決めておく。おすすめしたいのは、壁に近い奥の側を電源、手前の側を信号にする分け方だ。壁のコンセントは机の奥にあることが多いので、電源タップとACアダプターを奥に置けば、壁へ降りる線が短く済む。オーディオインターフェースやパソコンにつながる信号の線は、手前の天板の縁に近いところを通す。机が壁と平行に置かれているなら、奥と手前の2本の通り道ができることになる。 天板の奥行きが足りず前後に分けにくいときは、左右で分けてもいい。机の右半分の裏を電源、左半分を信号、というように決めて、ケーブルが机の中央で混ざらないようにする。大事なのは、電源の線と信号の線が長い距離にわたって並んで走らないことだ。並べて這わせるなら、目安として15cmほど離す。どうしても交わるところは、十字に直角で交差させる。こうすると、電源コードの磁界が信号の線に移る区間が短くなる。 ここでいう信号の線には、オーディオケーブルだけでなく、USBやLAN、ディスプレイのケーブルも含めて考えておくと分かりやすい。インターフェースとスピーカーをTRSやXLRのバランスケーブルでつないでいれば雑音には強いが、ギター用のケーブルや変換ケーブルのようなアンバランスの線は影響を受けやすい。アンバランスの線ほど電源の側から遠ざける、と覚えておけばいいと思う。 ケーブルトレーは、網の目と取り付け方で選ぶ 取り付け前の針金のケーブルトレー。両側の波形の針金のあいだから、ケーブルを横に差し込んで通すPhoto: brendan-c / CC BY 2.0 ケーブルトレーは、形で分けると3種類ほどになる。ひとつは針金や網でできたもので、IKEAのSIGNUMのように、長さ70cmほどの針金の受け皿を天板の裏にねじで吊るすタイプがよく知られている。日本ではサンワサプライやエレコム、山崎実業のtowerシリーズなどが、網の目の受け皿や、電源タップを載せる棚の形で出している。2つ目は鉄板を曲げた箱型で、StarTechのUDCMTRAYは幅60cmほどの鋼板製のトレーを天板にねじで留める。3つ目は磁石で付けるもので、オーストラリアのDeskyのように、鉄のフレームを持つ電動昇降デスクの脚まわりに吸着させるタイプがある。 選ぶときに最初に見たいのは、網か箱かという違いだ。ACアダプターや電源タップを載せるなら、網の目のほうが向いている。ACアダプターは動いているあいだ熱を持ち、まわりの空気に熱を逃がす前提で作られているので、ふたの閉じた箱や布の袋に押し込むのは避けたい。網なら熱がこもりにくく、上から見て中が分かるので、どこにどの線があるかも把握しやすい。箱型は見た目がすっきりする反面、底に埃がたまると外から見えないので、年に一度は外して拭くつもりで選ぶといい。 次に取り付け方を確かめる。ねじ留めは天板に穴をあけることになるが、いちばん安定する。賃貸向けの家具や借りものの机で穴をあけたくないなら、天板の縁を挟むクランプ式を選ぶ。クランプ式は、天板の厚みと、縁から天板の裏に出っ張りがないかを先に測っておく必要がある。磁石式は穴もクランプもいらないが、鉄のフレームがある机にしか付かない。両面テープで貼るだけの製品は、電源タップやACアダプターの重さが加わると、季節が変わるころに落ちてくることがあるので、軽い信号の線だけに使うのが安全だと思う。 長さは、机の幅の半分から3分の2くらいが使いやすい。電源の側に1本、信号の側にもう1本付けるなら、短めのものを2本そろえるのもいい。1本で済ませる場合は、トレーに電源の線を入れ、信号の線はトレーの外側の天板の裏に面ファスナーのクリップで這わせる、という分け方でも十分に効果がある。 電源タップをトレーに載せ、壁へ降ろす線を1本にする トレーを付けたら、まず電源タップを載せる。机の機材をすべて同じタップにまとめておくと、アースの基準が1か所にそろってハムが出にくくなる、という話は前の記事で書いたとおりで、トレーはそのタップの置き場所にちょうどいい。パソコン、ディスプレイ、オーディオインターフェース、スピーカー、照明のACアダプターをこのタップに集めれば、壁のコンセントへ降りていく線はタップの電源コード1本だけになる。 タップを載せるときは、差し込み口が真上を向かない向きにしたい。上を向いた差し込み口には、天板の裏から落ちてくる埃がそのまま積もる。横向きか、少し下向きに固定できるトレーなら、プラグの根元に埃がたまりにくい。使っていない差し込み口があれば、タップに付属しているキャップか、市販の差し込み口用のふたでふさいでおく。プラグの根元に絶縁のキャップが付いたタップを選んでおけば、トラッキングへの備えにもなる。 ACアダプターは、タップに直接差すと隣の口をふさいでしまうことが多い。短い延長コードで少し離して、トレーの網の上に横に寝かせて置くと、口もふさがず、熱も逃げやすい。アダプターどうしを重ねたり、アダプターの上にケーブルの束を載せたりしないことも大切だ。 壁へ降りる1本の電源コードは、机の脚に沿わせて下ろし、面ファスナーのバンドで2、3か所留めておく。床を這わせる距離をできるだけ短くし、コンセントに差したプラグのまわりに余ったコードを巻き付けない。こうしておくと、机の下で床に触れているのはこの1本と、机の脚だけになる。掃除機をかけるときの気軽さは、思っている以上に変わる。 余ったケーブルは束ねすぎず、大きな輪にして逃がす サーバーラックで、余ったLANケーブルを大きな輪にまとめて面ファスナーで留めた例。机の裏でも同じ考え方が使えるPhoto: Jemimus / CC BY 2.0 ケーブルはたいてい、必要な長さより少し長い。その余りをどう扱うかで、机の裏の見た目と、後々の扱いやすさが決まる。機材の位置を少し動かしたときのために、余りは捨てずに残しておき、トレーの中か天板の裏で大きめの輪にしてまとめる。データセンターなどではこれをサービスループと呼び、あえて余裕を持たせて配線する。 このとき、輪は小さくきつく巻かないようにしたい。電源コードは電気を流すとわずかに熱を持ち、きつく巻いた内側ほど熱が逃げにくくなる。延長コードやコードリールを巻いたまま使わないよう注意書きがあるのは、この熱のためだ。机の機材くらいの電力で急に危なくなることは少ないが、ドライヤーやヒーターを同じタップに差すような使い方をするなら、電源コードは束ねずに伸ばしておくほうがいい。 信号の線も、きつく曲げると傷みやすい。LANケーブルは、外径のおよそ4倍より小さな半径で曲げないのが目安とされている。外径6mmのケーブルなら、輪の直径を5cm以上にしておけばいい。オーディオケーブルやUSBケーブルも同じで、プラグの根元で急に折れ曲がる取り回しは、断線や接触不良の原因になる。 そもそも余りを減らすことも考えておきたい。USB 2.0の規格では、1本のケーブルの長さは5mまでとされている。机の上で使う機材に5mの線は長すぎるので、1mか1.5mの線に替えるだけで、トレーの中はかなりすっきりする。オーディオケーブルも、インターフェースからスピーカーまでの実際の距離を測り、少しだけ余裕のある長さにそろえると、余りの輪そのものが小さくなる。 束ねるのは面ファスナーで、両端に名前を書く 壁に沿って下ろしたケーブルを、黒い面ファスナーのバンドで留めているところ。締め具合を手で調整でき、何度でも外せるPhoto: Kai Hendry / CC BY 2.0 ケーブルをまとめる道具は、樹脂の結束バンドより、面ファスナーのバンドをすすめたい。樹脂の結束バンドは安くて丈夫だが、一度締めると切らないと外せず、力を入れて締めすぎるとケーブルの被覆をつぶしてしまう。LANケーブルの中の撚り線が押しつぶされると、通信の品質が落ちることもある。ネットワーク配線の現場で面ファスナーが好まれるのは、締める力を手で加減でき、つけ外しを何度でも繰り返せるからだ。 制作机の配線は、機材を買い足したり入れ替えたりするたびに変わる。そのたびに結束バンドを切って付け直すより、面ファスナーを外して1本足し、また巻き直すほうがずっと楽だ。ロール状の面ファスナーを好きな長さに切って使うものと、最初から1本ずつのバンドになっているものがあり、机の裏で使うなら後者のほうが扱いやすいと思う。電源の束と信号の束で色を変えておくと、どちらの通り道かが一目で分かる。 もうひとつやっておきたいのが、ケーブルの両端に名前を付けることだ。マスキングテープを巻いて「IF→右SP」「PC USB」のように書いておくだけでいい。タップに並んだプラグにも、どの機材の電源かを書いておく。雑音が出たときにケーブルを1本ずつ抜いて原因を探す作業は、名前が付いているだけで格段に早くなる。配線を終えたら、机の裏をスマートフォンで何枚か撮っておくと、次に配線を変えるときの手がかりになる。 ...

2026年11月6日 · 1 分 · 120 文字 · kingsworksub-jpg