映像編集とDTMを1つの机で兼ねるなら、画面は縦に積んでスピーカーを外へ逃がす

映像編集をするなら画面は広いほうがいい。タイムライン、プレビュー、カラーのスコープ、素材のビン。27インチを2枚並べると、ようやく窓を重ねずに作業できるようになる。ところが、同じ机で音楽も作ろうとすると話が変わる。2枚目の画面を置いた瞬間に、モニタースピーカーの置き場が消えるからだ。スピーカーを画面の外側へ押し出すと左右の間隔が広がりすぎ、画面の裏に隠すと音が画面にぶつかる。 この記事では、映像と音楽を1つの机で兼ねるときにぶつかる問題を、画面の配置、サンプルレート、音の出口、電源の4つに分けて順番に片付けていく。どれも機材を買い足す前に決められることばかりで、順番さえ守れば、2つの作業がお互いの邪魔をしない机になるはずだ。 2枚の画面とスピーカーは、机の横幅を取り合う 2台の画面の両外側にスピーカーを置いた自宅の制作机。画面の幅がそのままスピーカーの間隔を決めているPhoto: David J / CC BY 2.0 まず、机の上で何が起きているのかを数字で確かめておきたい。16:9の27インチの画面は、表示部分の幅がおよそ60cm、ベゼルを含めると61cm前後になる。2枚並べれば約122cmだ。一方、モニタースピーカーは、左右のスピーカーと自分の頭で一辺1〜1.2mほどの正三角形を作るのが基本になる。一辺を1.1mにすると、左右のツイーターの中心どうしの間隔も1.1mだ。5インチクラスのスピーカーは幅が18cm前後あるので、左右のスピーカーの内側どうしの隙間は90cmほどしか残らない。 ここに122cmの画面を置こうとすると、どうやっても収まらない。画面をスピーカーの手前に出すか、スピーカーを外へ押し出すかのどちらかになる。外へ押し出すと、ツイーターの間隔は1.4mを超え、正三角形を保つには椅子をかなり後ろに引かなければならない。そうすると今度は画面が遠くなりすぎる。27インチの画面を見るのにちょうどいい距離は60〜80cmほどで、スピーカーの三角形が求める距離とは最初から食い違っているのだ。 では、画面をスピーカーより手前に出せば解決するかというと、そうでもない。一辺1.2mの正三角形で考えると、耳からスピーカーを結んだ線までの奥行きは約1.04mになる。目から70cmの位置に画面を置いた場合、右のツイーターから耳までまっすぐ引いた線は、画面の位置では中心から約40cm右を通る。つまり、画面の位置で横幅80cmを超えるものを置くと、その端がスピーカーから耳への音の通り道に入り込む。27インチ2枚の122cmは、左右それぞれ20cmずつはみ出す計算だ。 画面の端が音の通り道に入ると、高い音ほど画面にさえぎられ、回り込んだ音と反射した音が混ざって届く。定位がぼやけ、ボーカルの輪郭が少し引っ込んで聴こえるようになる。2枚並べた画面の外側にスピーカーを置いた写真のような机はよく見かけるが、画面とスピーカーの前後関係まで気にして組まれていることは意外と少ないと思う。 画面は縦に積むか、ウルトラワイド1枚にまとめる 画面を鍵盤より奥の高い位置へ上げた制作机。画面の位置を変えるだけで、天板の上に使える場所が生まれるPhoto: Dai Stanton / CC BY-SA 2.0 前の節の計算から、画面の位置で横幅80cm以内に収めれば、スピーカーの音の通り道をふさがずに済むことが分かった。これを満たす方法は大きく2つある。 1つ目は、2枚の画面を横ではなく縦に積むことだ。モニターアームを使えば、27インチを上下に重ねても横幅は61cmのままで済む。下の画面を目の高さより少し低めに置き、そこに編集ソフトのタイムラインやDAWのアレンジ画面を出す。上の画面には、映像のプレビューやミキサー、素材のフォルダなど、ときどき目をやるものを置く。上の画面をずっと見上げていると首が疲れるので、上の画面は少し下向きに傾け、長く見つめる窓は必ず下に置くのがこつだ。 2つ目は、34インチのウルトラワイド1枚にまとめる方法だ。21:9の34インチは横幅がおよそ80〜81cmで、2枚並べた27インチより40cmほど狭い。ちょうど計算上の上限に収まる大きさで、曲面の画面なら両端がさらに手前へ来るので、音の通り道からも外れやすい。縦の高さは27インチとほとんど変わらないので、タイムラインを長く表示したい映像編集とも相性がいい。ただし、一辺1.2mより小さい三角形を組むと上限も狭くなるので、狭い机では縦積みのほうが安全だと思う。 どちらの方法でも、モニターアームは役に立つ。画面の台座がなくなると、天板の上にスピーカーの台や鍵盤を置く場所が生まれるし、画面の高さと奥行きを自由に決められるようになる。アームを選ぶときは、画面の背面にVESA規格の取り付け穴(多くは100×100mm)があるか、画面の重さがアームの耐荷重に収まるか、天板の厚みがクランプで挟める範囲かの3点を確かめておきたい。 縦積みにもウルトラワイドにもしたくない場合は、スピーカーを机から下ろして、机の奥に置いたスタンドに載せる手もある。スピーカーを画面より後ろ、少し高い位置に置けば、画面の上を越えて音を届けられる。そのぶん部屋の奥行きを使うので、6畳なら机を短い壁に向けて置くのが前提になる。置き方の細かい数字は、モニタースピーカーの置き方、6畳なら机を短い壁に向けるところからで詳しく扱った。 画面と天板は、音を跳ね返す板でもある 画面の配置が決まったら、反射も確かめておきたい。液晶の画面は硬くて平らな板なので、スピーカーの音をよく跳ね返す。昔のブラウン管に比べれば薄くて小さいぶん影響は減ったが、耳の近くに大きな板が立っていることに変わりはない。画面とスピーカーの角度によっては、跳ね返った音がわずかに遅れて耳に届き、直接の音と重なって中高域に細かい凸凹を作る。 確かめ方は簡単で、座った位置から画面の表面をのぞき込み、スピーカーのツイーターが映り込んで見えたら、そこが反射の通り道になっている。画面を少し内側か下向きに傾けるだけで、映り込みは消えることが多い。天板も同じで、手鏡を天板に置いてツイーターが見える位置があれば、そこで跳ね返った音が耳に届いている。スピーカーを台で持ち上げて天板の手前の端に寄せると、天板で跳ね返る量はかなり減る。机の高さと奥行きの決め方は、DTMデスクは奥行きで選ぶ。長時間座るための天板の高さと椅子の調整範囲にまとめてある。 映像は48kHz、音楽は44.1kHz。作業ごとにレートをそろえる DaVinci Resolveの編集キーボード。映像と音楽で入力機器が増えるほど、音の設定は一度決めたら動かさないほうがいいPhoto: TaurusEmerald / CC BY-SA 4.0 画面の次は、見えない部分の折り合いだ。いちばんつまずきやすいのがサンプルレートで、映像の世界では48kHzが標準、音楽の配信やCDでは44.1kHzが長く使われてきた。48kHzが映像で選ばれているのは、24・25・30コマの映像と割り切れる関係にあり、1コマあたりの音の数がきれいにそろうからだ。DaVinci Resolveも、何も設定しなければ48kHzで動く。 困るのは、1台のオーディオインターフェースを両方のソフトで使うときだ。インターフェースのクロックは、同時に1つのレートでしか動かない。DAWで44.1kHzの曲を開くと、DAWはインターフェースを44.1kHzに切り替える。そのまま編集ソフトやブラウザで48kHzの音を鳴らそうとすると、機種や設定によっては音が出ない、雑音が混じる、音程がずれる、といったことが起きる。動いているように見えても、裏でレートの変換が入り、音質が少し落ちていることもある。 おすすめしたいのは、映像に付ける音楽はDAWの側も最初から48kHzで作ることだ。最後に44.1kHzで書き出す必要がある曲だけ、書き出しの時点で変換すればいい。Windowsの既定のデバイスも、サウンドの設定にある「詳細プロパティ」から48kHzにそろえておく。こうしておけば、DAWと編集ソフトを行き来しても、インターフェースのレートが勝手に切り替わることはほとんどなくなる。 もう1つ確かめたいのが排他モードだ。Windowsでは、アプリが音の出口を独占できる設定があり、DAWがASIOでインターフェースをつかむと、ほかのアプリの音が鳴らなくなることがある。編集ソフトの音声出力は共有モードで鳴らし、サウンドの設定で「アプリケーションによりこのデバイスを排他的に制御できるようにする」のチェックを外しておくと、DAWを閉じ忘れて編集ソフトが無音になる、といった事故が減る。ASIOの扱いが得意なドライバーを持つインターフェースなら、DAWと編集ソフトを同時に開いても両方の音を鳴らせる機種もある。ドライバー方式の違いや音切れの切り分け方は、ASIOとWASAPIの音切れ、疑う順番はドライバ方式・バッファ・DPCの3段階で整理した。 音の出口は1つにまとめ、切り替えは手元で行う MackieのBig Knob Passive。電源を使わない受け身の回路で、入力2系統とスピーカー2組を手元で切り替えられるPhoto: PJ / CC BY 4.0 映像と音楽を兼ねる机で、意外と散らかりやすいのが音の出口だ。パソコンのグラフィックボードからHDMIで画面に音が送られ、画面の小さなスピーカーから鳴る。インターフェースからはモニタースピーカーへ、ノートパソコンからは別のスピーカーへ。出口が増えると、どの音がどこから鳴っているのか分からなくなり、編集中に音量のバランスを判断する基準が揺らぐ。 基本は、パソコンから出る音をすべてオーディオインターフェースに集めることだと思う。Windowsのサウンドの設定でHDMIの出力を無効にし、既定の出力をインターフェースに固定する。画面に付いているスピーカーは使わない。こうすると、DAWで聴いている音と、編集ソフトで聴いている音が、同じスピーカー、同じ音量のつまみを通るようになる。映像の音の大きさを判断するときも、音楽を作るときと同じ耳の基準が使える。 そのうえで、手元に音量と切り替えの操作を置くと作業が楽になる。インターフェースの出力つまみでも音量は変えられるが、モニターコントローラーがあると、スピーカーを2組つないで切り替えたり、音をモノラルにして確かめたり、ボタン1つで音を一時的に小さくしたりできる。写真のBig Knob Passiveは電源のいらない受け身の回路で、音の通り道に余計なものを挟まずに済むのがいいところだ。ヘッドホン端子は持たないので、ヘッドホンはインターフェースの側から取る。 スピーカーの2組目には、小さなスピーカーを用意しておくと映像の仕事で役に立つ。編集した映像は、最終的にはスマホやノートパソコン、テレビのスピーカーで見られることがほとんどだ。大きなスピーカーでは聴き取れた台詞が、小さなスピーカーではBGMに埋もれてしまうことがある。切り替えボタン1つで両方を確かめられると、音楽と台詞のバランスを詰める作業がかなり速くなる。 映像の確認用に、Blackmagic DesignのUltraStudio MonitorやDeckLinkのような映像出力の機器を使う場合は、画面と音のずれにも気をつけたい。インターフェースのバッファを大きくするほど音は遅れて出るし、テレビや画面の側にも映像を処理する遅れがある。編集ソフトには音と映像のずれを補正する設定があるので、拍手のような短い音と映像を見比べて、ずれを詰めておくといい。 ...

2026年10月18日 · 1 分 · 117 文字 · kingsworksub-jpg