炭酸水メーカーは元が取れるのか、ソーダストリームTERRAとE-TERRAのガス代と強さの決め方
コンビニやスーパーの棚には、強炭酸をうたうペットボトルがずらりと並んでいる。ウィルキンソンのタンサンをはじめ、ガスの強さを競うような商品が年々増えてきた。ただ、どれだけ種類が増えても、買う側が選べるのは「その商品に詰められた強さ」までだ。今日は少し弱めがいい、ハイボール用にはとびきり強くしたい、という気分の違いには応えてくれない。 炭酸水メーカーが市販品と決定的に違うのは、まさにこの点だと思う。値段が安くなることやゴミが減ることもうれしいが、いちばん大きいのは、ガスの強さを自分の手で決められることだ。この記事では、国内で手に入りやすいソーダストリームの手動モデル「TERRA(テラ)」と電動モデル「E-TERRA(E-テラ)」を例に、強さの決め方、ガスシリンダーの費用、1リットルあたりの単価、割り材として使うときの勘どころを順に整理していく。 押す回数で強さが変わる、手動のTERRA ソーダストリームの旧モデルと専用ボトル。本体上部のボタンを押してガスを注ぐ構造はTERRAも同じ(クリックでTERRAのAmazonページへ) Photo: Meaghan O'Malley / CC BY 2.0 TERRAは電源を使わない手動式の炭酸水メーカーで、公式の税込価格は14,850円。スターターキットには本体、60リットル分のガスシリンダー1本、専用ボトル(1リットルと0.5リットルが1本ずつ)が入っている。コンセントのいらない機械なので、キッチンのどこに置いてもよく、停電時やキャンプ先でも使える気軽さがある。 使い方は、水を入れたボトルを本体に差し込み、上部のボタンを押すだけだ。ボタンを1〜2秒ほど押し込むと、シリンダーから炭酸ガスがボトルの中へ勢いよく吹き込まれ、「ブシュッ」という音とともに水が泡立つ。これを何回繰り返すかで、炭酸の強さが決まる。メーカーの案内では3回で標準、5回で強めという目安が示されている。軽く口当たりをよくしたいだけなら1〜2回で止めてもいい。 手動式の良さは、この「回数」という単位がとてもわかりやすいことだと思う。昨日は4回で少し物足りなかったから今日は5回にしよう、という調整が直感的にできる。押す時間の長さでもガスの量は変わるので、慣れてくると「長めに4回」「短めに5回」のような細かい調整もできるようになる。逆に言えば、押し方が日によってぶれると仕上がりもぶれる。毎回まったく同じ強さを再現したい人には、少し気を遣う部分かもしれない。 もうひとつの利点は、構造が単純なぶん壊れる部品が少ないことだ。電子回路を持たないので、長く使っても「電源が入らない」というトラブルとは無縁でいられる。 ボタンひとつで3段階、電動のE-TERRA キッチンカウンターに並んだソーダストリーム。家電として置いておくなら、色と高さも選ぶ基準になる(クリックでE-TERRAのAmazonページへ) Photo: Wassersprudler.de / CC BY-SA 4.0 E-TERRAはTERRAの電動版で、公式の税込価格は24,200円。2023年6月に国内で発売された。本体の前面には泡のマークが1つ、2つ、3つと描かれたボタンが並んでいて、左から弱め、標準、強めの3段階に対応している。好みの強さのボタンを押すと、あとは機械が決まった量のガスを注入し、終わるとボタンの点滅で知らせてくれる。電源はACアダプターで、電池では動かない。 E-TERRAのいちばんの価値は、毎回同じ強さを再現できることだと感じる。家族の誰が操作しても、強めのボタンを押せば強めの炭酸ができる。手動式のように押す時間や回数を数える必要がないので、料理をしながら片手間に作るような場面でも失敗しにくい。 その代わり、強さの選択肢は3つに限られる。手動式なら「4回半」のような中間の強さも作れるが、E-TERRAでは3段階のどれかを選ぶことになる。また、コンセントの近くに置く必要があり、本体の値段もTERRAより1万円近く高い。差額の9,350円で何が買えるかを考えると、「押す回数を数えるのが面倒かどうか」が手動と電動を分ける一番の基準になると思う。 本体の大きさは、どちらも高さ40センチ強、幅13センチ前後と、縦に細長い形をしている。吊り戸棚の下に置くなら、ボトルを差し込むときの高さも含めて余裕があるかを先に測っておくと安心だ。 ガスシリンダーの交換費用と1リットルの単価 炭酸ガスのボンベと圧力計。ソーダストリームのシリンダーも、中身は高圧で詰められた二酸化炭素だ Photo: Kevin B 3 / CC BY 2.0 炭酸水メーカーのランニングコストは、ほぼガスシリンダー代だけで決まる。現行のTERRAとE-TERRAは、ピンク色のレバーで差し込む「クイックコネクト」方式のシリンダーを使う。1本で作れる炭酸水の量は60リットルが目安だ。 空になったシリンダーは、捨てずに交換に出す。全国およそ1万1千の家電量販店やドラッグストア、スーパーで、空のシリンダーを渡すとガスの入ったものと取り替えてもらえる。公式サイトからの宅配交換もあり、自宅で空のシリンダーを引き取ってもらい、充填済みのものを受け取る形になる。交換価格は1本2,580円、2本セットだと4,580円(いずれも税込)。空のシリンダーを返さずに新品を買い足す場合は1本4,150円で、交換より1,570円高い。予備を1本持っておきたい人以外は、交換で回すのが基本になる。 ここから1リットルあたりの単価を出してみる。1本交換なら2,580円を60リットルで割って約43円、2本セットなら4,580円を120リットルで割って約38円だ。ボトルを洗う水道代は誤差の範囲なので、ほぼこの数字がそのまま炭酸水の原価になる。 比べる相手として、500ミリリットルのペットボトルの強炭酸水を1本100円前後で買うと、1リットルあたり約200円になる。差は1リットルにつき約157円。TERRAのスターターキット代14,850円をこの差額で割ると、およそ95リットルで本体代を取り戻せる計算になる。1日に500ミリリットルを飲む人なら190日ほど、半年あまりで元が取れる。E-TERRAなら同じ計算で約154リットル、1日500ミリリットルで300日ほどだ。 ただし、60リットルという数字は標準的な強さで作った場合の目安で、毎回強めに作ればそのぶんガスを多く使う。TERRAで5回押しを習慣にすると、交換までの本数は60リットルより少なくなると考えておいたほうがいい。それでも、市販品との価格差が4〜5倍あることを思えば、強めに作っても割高になる心配はまずないと思う。 数字以外の利点として、ペットボトルのゴミがほとんど出なくなることも大きい。強炭酸水を箱買いしていた家庭なら、資源ごみの日に抱える袋の大きさがはっきり変わるはずだ。重い箱を運ばなくてよくなるのも、地味だがありがたい。 ボトルの扱いと、きれいに仕上げるための水の温度 炭酸水メーカーで失敗しないために、いくつか守りたい決まりがある。いちばん大事なのは、ボトルに入れてガスを注ぐのは水だけにすることだ。ジュースや果汁を入れたまま炭酸を注入すると、勢いよく泡があふれて本体の中まで汚れてしまう。味を付けたいときは、炭酸を入れ終わったあとにシロップや果汁を足す。ボトルを少し傾けて内側の壁を伝わせるようにゆっくり注ぎ、ふたを閉めてから静かに傾けて混ぜると、泡が暴れにくい。 専用ボトルには使用期限が刻印されている。圧力のかかる容器なので、期限を過ぎたものは使わずに買い替えるのが安全だ。手洗いが基本のボトルと食洗機に対応したボトルがあるので、手持ちのボトルの表示を一度確認しておくといい。熱湯での洗浄も変形の原因になるので避けたい。 仕上がりを大きく左右するのが水の温度だ。二酸化炭素は冷たい水ほどよく溶けるので、冷蔵庫で冷やした水を使うと、同じ回数でもはっきり強い炭酸になる。常温の水で作ると、ガスが溶けきらずに泡ばかり立ち、飲むころには刺激が弱くなっている。前の晩にボトルに水を入れて冷蔵庫に入れておき、飲む直前に炭酸を注ぐのがいちばん手軽で確実な方法だと思う。冷えた水を使えば、強めの炭酸を得るのに必要な押す回数も減らせるので、ガスの節約にもなる。 作った炭酸水は、ふたをしっかり閉めて冷蔵庫に入れておけば、半日から1日程度は十分な刺激が残る。ただ、開け閉めを繰り返すたびにガスは抜けていくので、飲み切れる量だけを作るほうが満足度は高い。0.5リットルのボトルが付属しているのは、こういう使い方のためだと考えると納得がいく。 ハイボールと割り材で、強さを使い分ける ジョッキで出される氷入りのハイボール。ウイスキーと氷に注ぐ過程で、炭酸は思った以上に抜けていく Photo: N509FZ / CC BY-SA 4.0 自分で強さを決められる利点がいちばん生きるのは、ハイボールやサワーの割り材として使うときだ。グラスに氷を入れ、ウイスキーを注ぎ、そこへ炭酸水を足していくと、氷にぶつかるたび、ウイスキーと混ざるたびにガスが抜ける。グラスに入った時点では、ボトルで感じた刺激より一段弱くなっていると考えたほうがいい。 そこで、割り材にする日は普段より強めに作っておく。TERRAなら5回押し、E-TERRAなら泡3つのボタンを選び、ウイスキー1に対して炭酸水3〜4の割合で、氷に直接当てないようグラスの縁から静かに注ぐ。マドラーで底から1回だけ持ち上げるように混ぜれば、強めに作った炭酸の刺激がちょうどよく残る。 反対に、食事と一緒にそのまま飲むなら、標準か弱めくらいがちょうどいいと感じる。強すぎる炭酸は胃がふくれて料理が入りにくくなるし、出汁の繊細な味を消してしまうこともある。和食に合わせるなら3回押し、揚げ物や肉料理なら4回押し、というように料理で変えてみると、強さを選べることのありがたみがよくわかる。 レモン果汁を搾ってレモンサワー風にしたり、梅シロップやジンジャーシロップを割ってみたり、コーヒーや紅茶の濃いめの抽出液を炭酸で割るのも楽しい。どれも「炭酸を入れたあとで味を足す」という決まりさえ守れば、市販品にはない組み合わせを気軽に試せる。 手動と電動、どちらを選ぶか ここまでの内容をまとめると、選び方はそれほど難しくない。強さを細かく調整したい人、置き場所に電源がない人、なるべく早く元を取りたい人にはTERRAが向いている。14,850円という価格は、市販の強炭酸水を日常的に飲む人なら半年あまりで取り戻せる水準だ。 ...