モニタースピーカーの置き方、6畳なら机を短い壁に向けるところから
モニタースピーカーを新しくしたのに、思ったほど音が良くならない。低音が膨らんで聴こえたり、逆に痩せて聴こえたり、左右で鳴り方が違ったりする。そういうとき、原因はスピーカーそのものより、置き方と部屋のほうにあることが多いと思う。同じスピーカーでも、壁から10cm動かしただけで低音の量がはっきり変わる。座る位置を少し前後させるだけで、ベースの特定の音だけが消えたり、急に大きくなったりする。 この記事では、6畳の部屋を前提に、机の向き、スピーカーと頭の位置関係、壁からの距離、座る位置、吸音材を足す順番、最後に測って確かめる方法までを、順番に決めていく。お金のかかる吸音材や補正ソフトは後回しにして、まずは置き方だけで直せる部分を先に片付けたい。順番を守るだけで、同じ機材から引き出せる情報の量はかなり増えるはずだ。 机の向きは、短い壁に向かって長い方向に音を飛ばす 業務用のコントロールルームは、聴く位置を中心に部屋そのものが左右対称に作られているPhoto: Will Fisher from Richmond, VA, United States / CC BY-SA 2.0 6畳の部屋は、畳の規格によって差はあるものの、おおよそ幅2.7m、奥行き3.6m、天井の高さ2.4mほどの細長い箱になる。最初に決めるのは、この箱のどちらの壁に机を向けるかだ。結論から言うと、短い壁(2.7mの側)に机を向けて、長い方向(3.6mの側)に向かって音を飛ばす置き方をおすすめしたい。 理由はいくつかある。一つは左右の対称性だ。短い壁に向かって部屋の幅の真ん中に机を置けば、左右のスピーカーから横の壁までの距離をそろえやすい。左右の壁までの距離が違うと、片側だけ反射音が早く強く返ってきて、定位が片側に引っ張られたように聴こえる。窓やクローゼット、ドアの位置で完全な対称は難しいとしても、少なくとも壁までの距離だけは左右でそろえておきたい。 もう一つは、自分の後ろに空間を残せることだ。長い壁に向かって机を置くと、奥行きは2.7mしかなく、座った位置のすぐ後ろに壁が来る。背中側の壁が近いと、そこで跳ね返った低音が耳元で重なり、低い帯域が実際より厚く聴こえやすい。短い壁に向ければ、後ろに2m以上の余裕が生まれ、あとで説明する「座る位置の調整」ができるようになる。ベッドや本棚の配置との兼ね合いはあるが、制作の部屋として使うなら、まずこの向きを基本に考えるのがいいと思う。 スピーカーと頭で正三角形を作り、ツイーターを耳の高さへ 角度の付いた台に載せると、天板から浮かせつつツイーターを耳の方向へ向けられるPhoto: Francis Bourgouin / CC BY 2.0 机の向きが決まったら、次はスピーカーと頭の位置関係だ。基本は、左右のスピーカーと自分の頭が正三角形になるように置くこと。正面から見て左右それぞれ30度、二つのスピーカーの間の角度が60度になる。机の上のニアフィールドなら、三角形の一辺はだいたい1mから1.2mくらいに収まることが多い。スピーカーは少し内側に振って、ツイーターがまっすぐ自分の耳の方を向くようにする。左右の角度がずれると定位の中心もずれるので、メジャーで左右の距離を測り、数cm以内にそろえておきたい。 高さは、ツイーター(高音用のユニット)を座ったときの耳の高さに合わせる。床から耳までは、一般的な椅子に座った状態でおよそ110cmから120cmになる。机の天板が72cm前後なら、スピーカーを天板に直置きするとツイーターは耳よりかなり低くなるはずだ。高音は指向性が強く、耳の高さから外れると、声の明瞭さに関わる帯域が少し引っ込んで聴こえる。台で持ち上げるか、持ち上げきれない場合は上向きに傾けて、ツイーターの軸が耳に向くようにする。 スピーカーは縦置きを前提に設計されているものがほとんどだ。机が狭くて横置きにしたくなることもあるが、横に倒すとツイーターとウーファーの位置関係が変わり、頭を少し動かしただけで音が変わりやすくなる。どうしても横置きにするなら、ツイーターを外側に来るように左右対称に置き、メーカーの説明書で横置きが許されているかを確かめたい。 天板に直置きしないことも大切だ。理由は二つある。一つは振動で、天板がスピーカーの振動を受けて一緒に鳴り、低音がにごる。もう一つは反射で、スピーカーから出た音が天板で跳ね返り、少し遅れて耳に届く。直接の音と反射した音の道のりの差が30cmあれば、およそ570Hz付近を最初に、等間隔に音が打ち消し合う谷ができる。これがくし形の凸凹(コムフィルター)で、中低域の判断を難しくする。インシュレーターや傾斜の付いた台で持ち上げ、さらにスピーカーを天板の手前の端に寄せると、反射する面が減って凸凹が浅くなる。机そのものの高さや奥行きの決め方は、DTMデスクは奥行きで選ぶ。長時間座るための天板の高さと椅子の調整範囲にまとめてある。 前の壁からの距離は、近いか遠いか、どちらかに振り切る 正三角形が決まると、スピーカーを前の壁からどれだけ離すかという問題が出てくる。ここは中途半端な距離がいちばん困る部分だ。スピーカーから後ろに回り込んだ低音は、前の壁で跳ね返って正面の音と重なる。壁までの距離が音の波長の4分の1になる周波数では、跳ね返った音と正面の音が逆の向きで重なって打ち消し合い、そこだけ低音がへこむ。周波数は、音速(約343m/s)を壁までの距離の4倍で割れば求められる。 前の壁までの距離 へこむ周波数の目安 0.2m 約430Hz 0.3m 約290Hz 0.5m 約170Hz 0.75m 約115Hz 1.0m 約86Hz 1.5m 約57Hz 表を見ると、壁から50cmから1mほど離したあたりで、ベースやキックの芯に当たる帯域がへこむことが分かる。逆に、2m近く離せばへこみは50Hz以下に下がって目立ちにくくなるが、奥行き3.6mの6畳でそれをやると、座る位置が部屋の後ろ半分にはみ出してしまう。現実的なのは反対側に振り切る方法で、スピーカーをできるだけ壁に近づけ、へこむ周波数をウーファーが前に音を出しやすい高めの帯域へ押し上げる。 壁に近づけると、今度は低音全体が持ち上がる。そこで使うのが、多くのモニターの背面に付いている低域を削るスイッチだ。壁際に置くことを前提に、この調整で低域を数デシベル下げておく。背面にバスレフポートがある機種は、ポートを壁で完全にふさぐと低音が不自然に膨らむので、説明書に書かれた最小の距離は守りたい。ポートの向きによる違いは、モニタースピーカー5台、机の上の低音はバスレフポートの向きで変わるで詳しく比べている。左右の横の壁からの距離も、ここで改めてそろえておく。 モニターアームで画面を浮かせると、机の奥行きとスピーカーの響きはどう変わるのか 定在波を避けて、座る位置を部屋の真ん中から外す コンソールの奥に置かれた小型モニター。聴く位置は部屋の中心ではなく前寄りに取られているPhoto: Patrick Woodward from Los Angeles, USA / CC BY 2.0 部屋の中では、向かい合う壁の間を低音が行き来して、特定の周波数だけが強くなったり弱くなったりする場所ができる。これが定在波だ。いちばん強く出る周波数は、音速を壁と壁の距離の2倍で割ると求められる。幅2.7m、奥行き3.6m、天井2.4mの6畳なら、奥行き方向で約48Hzと約95Hz、幅方向で約64Hzと約127Hz、高さ方向で約71Hzと約143Hzが目安になる。どれもベースやキックの基音が集まる帯域だ。 困るのは、この強弱が場所によって大きく違うことだ。たとえば部屋の奥行きのちょうど真ん中では、48Hzの定在波が打ち消し合ってほとんど聴こえなくなる。そこに座ってミックスすると、48Hz付近のベースが足りないと感じて持ち上げすぎ、別の場所で聴くと低音が過剰になる。だから、座る位置は部屋の真ん中を避けたい。 よく使われる目安に、前の壁から部屋の長さの38%の位置に座るというものがある。奥行き3.6mなら、前の壁から約1.37mだ。前の節でスピーカーの前面を壁から30〜40cmに置いたとすると、そこから耳までの距離は約1mになり、正三角形の一辺としてちょうどよい長さに収まる。机の奥行きや椅子の位置で多少前後するのは問題ない。大事なのは、真ん中に座らないことと、後ろの壁に背中を近づけすぎないことだ。 ...