「Tank!」から佐世保の喫茶店まで、アニメーションとジャズが出会う場所

アニメでジャズが鳴る場面は、だいたいこうなります。サックスが静かに立ち上がり、曲の最初の一音目で場面が切り替わり、キャラクターの代わりに音が主役の座を取ります。 この型がどこから来たのかを考えると、少し面白い事情が見えてきます。今までに辿った跳躍は、音が実際に生まれた側の地図——1940年代のビバップから1950年代のハードバップまでです。今回はその地図を裏返して、音が「雰囲気」として使われる側から見ます。 起点になるのは三つのアニメです。1998年の『カウボーイビバップ』、2012年の『坂道のアポロン』(海外では『Kids on the Slope』として知られます)、そしてその間の『スペースダンディ』。三つのうち二つの音楽は同じ人、菅野よう子でした。 そしてその菅野よう子が、ジャズについて少し風通しの悪いことを話しています。 「ジャズにしたい」という一言 1947年2月、ニューヨーク・カーネギーホール。マイクに口をつける Louis ArmstrongPhoto: William P. Gottlieb / Library of Congress(パブリックドメイン) 『カウボーイビバップ』の制作記録は、確かな数字の並びで組み立てることができます。テレビ東京での放送は1998年4月3日に始まりました。演出は渡辺信一郎、シリーズ構成は信本敬子、キャラクターデザイン兼作画指導は川元利浩。音楽は菅野よう子で、音楽プロデューサー佐々木史朗と太田敏明。アニメーション制作はサンライズです。 演出の渡辺が渡してきた指示は、たった一言でした。「ジャズにしたい」。それだけです。キャラの指定も、衣装の指定も、舞台の設定もありません。 この一点を受け止めたあとに来るのが、菅野がどう「ジャズ」という音楽の相手を取ったかという問題です。 音楽の録音には、米国のレコーディングエンジニアが関わっています。菅野はこう話しています。 「結局は、伝説的なジャズのレコーディングエンジニアであるルディ・ヴァン・ゲルダーさんにレコーディングに参加してもらいました。彼に参加を要請したのも私の判断です。私の判断というか、日本のスタジオのエンジニアさんに『ジャズといえば、ルディ・ヴァン・ゲルダーっていうすごい人がいるよ』って教えてもらって、よっしゃ!ってすぐに電話しちゃって」 van Gelder は1949年に自宅の居間で録音を始め、1959年に新しいスタジオに移った人です。以来50年以上、Blue Note と Impulse! のレコードを扱ってきました。つまり『カウボーイビバップ』の音は、1940年代の音源を直接使い回したものではなく、60年あとに別のスタジオで組まれたものになっています。 ピンとこなかった人が書いた 2010年7月2日、Anime Expo 2010 のステージで演奏する菅野よう子と中嶋美嘉Photo: Dennis Amith / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons 彼女のジャズ観は、穏やかではありません。こう語っています。 「渡辺信一郎監督から『ジャズにしたい』というキーワードだけは出ていたんですけど、私にはジャズがまったくピンと来なくて。だって、ジャズで売れたって聞いたことないし、学生のときのあのビアガーデンのバンドでもジャズなんて1曲もやってないし、CM音楽でもジャズ風の発注なんて全然なかったし。ジャズが真ん中を張ってるってイメージがないんですよ。そんなの絶対売れないし誰も観ないと思っていました」 さらに、こうも言っています。 「逆にジャンルを指示されたり、規定されたりしたら、私はサウンドトラックは書けないですね」 同じ人物が、こうも話します。 「絶対的に違うのは実写だとその場のタレントさんや俳優さんの演技に、脚本も変えうる力がある。けどアニメは最初に発想されたものから抜けることはできません」 アニメは最初の発想から抜けられない。だから渡された「ジャズ」は、物語のなかに初めからあった音楽ではなく、あとから加えられた音楽だった。 つまり、ジャンルを指定されたらサウンドトラックは書けないと言った人が、その指定の最初のひとつに手を出してしまった。予言の反対側にある出来事です。 十二話と、二十六話 テレビ東京での放送は、1998年4月3日から6月26日まででした。流れていたのは26本のうち12本と、まとめ番組の「よせあつめブルース」だけ。話も番号も、前後の折り返しです。 全部を通して見たのはWOWOWで、1998年10月23日に始まり、1999年4月23日まで続きます。最終回は第26話「The Real Folk Blues (PART 2)」でした。 2001年9月1日、劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』が公開されます。主題歌はシートベルツの「Ask DNA」、エンディングは山根麻衣が歌った「Gotta knock a little harder」。サウンドトラックは「FUTURE BLUES」という名前で発売されました。 ...

2026年9月29日 · 1 分 · 195 文字 · kingsworksub-jpg