ポータブルSSDをUSB4にすると音源の読み込みは速くなるのか、10Gbpsと40Gbpsで変わるもの

ソフト音源のライブラリは、気づくと内蔵ストレージを食いつぶしている。オーケストラ音源をいくつか入れ、ドラム音源とピアノ音源を足すだけで、数百GBはすぐに埋まる。ノートパソコンの内蔵SSDを大容量のものに載せ替えるのは難しく、メーカーの上位構成を選ぶと値段が大きく跳ね上がる。そこで多くの人が考えるのが、音源ライブラリをポータブルSSDに移すという方法だ。 ところが、いざポータブルSSDを探し始めると、規格の名前で迷うことになる。USB 3.2 Gen2、Gen2x2、USB4、Thunderbolt。最大転送速度は1,050MB/秒、2,000MB/秒、3,800MB/秒と並び、値段も速さに合わせて上がっていく。速いほうが音源の読み込みも速くなるのだろう、と考えるのは自然だが、そこには少し落とし穴がある。 この記事では、音源ライブラリを外付けに置くという使い方に絞って、10Gbpsと40Gbpsの差が何に効いて何に効かないのかを整理する。そのうえで、ドライブを選ぶ前に、パソコン側のポートとケーブルをどの順番で確かめればよいかをまとめておく。 10Gbpsと40Gbps、数字の上では約3倍の差がある SanDisk Extreme Portable SSD(1TB)の裏面。USB 3.2 Gen2の10Gbps接続で、読み出しは最大1,050MB/秒Photo: ITEagle Europe - Sebastiaan Broekhoven / CC BY-SA 4.0 まず、規格の名前と速さの関係を整理しておく。USBの名前は何度も付け替えられてきたので、同じ速さに複数の呼び方がある。いまのポータブルSSDでよく見かけるのは、次の3つの段階だ。 いちばん普及しているのが、USB 3.2 Gen2の10Gbps。SanDisk Extreme Portable SSDやSamsungのT7 Shieldがこの規格で、カタログ上の読み出し速度は最大1,050MB/秒になる。10Gbpsをそのまま8で割れば1,250MB/秒だが、信号の符号化や通信の手順に使われる分があるので、実際に出せるのは1,000MB/秒前後になる。 次の段階がUSB 3.2 Gen2x2の20Gbpsで、SamsungのT9やCrucialのX10 Proがこれに当たる。カタログ値は2,000MB/秒前後。10Gbpsの通り道を2本束ねて速くする仕組みだ。 そして、いちばん速いのがUSB4の40Gbps。SanDiskがUSB4対応のExtreme PROを出しており、カタログ上の読み出しは最大3,800MB/秒になっている。USB4はUSBの中にPCIeという内部接続の通り道を通す仕組みで、その分の手間があるため、実測では3,000MB/秒台前半に落ち着くことが多い。それでも、10Gbpsの製品と比べれば、連続した読み出しで約3倍の差がある。 最近のケーブルや製品の箱では、こうした規格名の代わりに「USB 10Gbps」「USB 20Gbps」「USB 40Gbps」のように速さをそのまま書いた表示が増えている。名前で迷ったら、何Gbpsかだけを見ればよい。 音源の読み込みは、連続した読み出しの速さだけでは決まらない ここからが本題だ。転送速度が3倍なら、音源を開く時間も3分の1になるのかというと、そうはならない。理由は、音源ライブラリの読み込みが、大きなファイルを1本ずつ順番に読むような作業ではないからだ。 カタログに書かれた1,050MB/秒や3,800MB/秒は、大きなファイルを途切れなく読み続けたときの、いわば最高速度だ。動画ファイルを丸ごとコピーするような場面では、この数字がそのまま効いてくる。一方、Kontaktのようなサンプラーで1つの音色を開くとき、ドライブの中では、楽器を構成する数千、数万のサンプルファイルの頭の部分だけを、あちこちから少しずつ拾い集める作業が起きている。こうした細かい読み出しは、連続した読み出しよりずっと遅く、どのSSDでも数百MB/秒に届かないことが多い。この領域では、10Gbpsのドライブでも通り道の太さが足を引っ張ることはほとんどない。 さらに、読み込みにはドライブ以外の仕事も含まれる。Kontaktのライブラリの多くは、独自の形式で圧縮された状態で保存されていて、読み出したあとにCPUで展開する必要がある。音色の設定や画面の部品を準備する時間もある。ドライブが3倍速くなっても、こうした部分の時間は変わらない。 だから、10Gbpsのポータブルクラスから40Gbpsに替えて、音色を開くまでの待ち時間がはっきり縮んだと感じられる場面は、思っているより少ないと思う。差が出るとすれば、大編成のテンプレートを一度にまとめて開くときのように、読み込む総量が大きいときだ。 逆に、40Gbpsの速さがそのまま効くのは、ライブラリのコピーや移動だ。たとえば500GBのライブラリを内蔵からポータブルSSDに移すとき、1,000MB/秒なら理屈の上では8分あまり、3,000MB/秒なら3分弱で終わる。ちなみに外付けのHDDだと、毎秒150MB前後として1時間近くかかる。新しいパソコンに環境を移すときや、バックアップを取り直すときには、この差はありがたい。 Kontaktのプリロードの量で、SSDに任せる分を決める 音源ライブラリをSSDに置く利点は、読み込みの速さよりも、むしろメモリーの節約にあると思う。Kontaktは、サンプルの頭の部分だけを先にメモリーへ取り込んでおき、残りは演奏に合わせてドライブから少しずつ読み出す仕組みを持っている。ディスクから直接再生するという意味で、DFDと呼ばれている。 先に取り込んでおく量をプリロードと呼び、これはKontaktの設定画面にあるメモリーの項目で調整できる。HDDのように読み出しの反応が遅いドライブでは、プリロードを大きめにしておかないと、鍵盤を弾いた瞬間に音が間に合わないことがある。SSDなら反応が速いので、プリロードを小さくしても音が途切れにくい。そのぶん、1つの音色が使うメモリーが減り、同じメモリー量でより多くの楽器を同時に立ち上げられる。 ここで必要になるのは、毎秒何千MBという連続した速さではなく、細かい読み出しに素早く応える反応の良さだ。そしてこれは、10GbpsのポータブルSSDでも十分に満たせる。演奏中に1つの音色がドライブから読み出す量は、それほど大きくないからだ。 プリロードを下げすぎると、トラック数の多い曲で音が欠けることもあるので、少し下げては再生して確かめる、という手順で詰めていくのがよいと思う。メモリーが16GBのノートパソコンで大きな音源を扱っているなら、ここを見直すだけで、立ち上げられる楽器の数がかなり変わるはずだ。 20Gbpsのドライブは、Macでは10Gbpsに落ちる Samsung T7 Shield。10Gbps接続のポータブルSSDで、ゴムの外装が落下や水滴から本体を守るPhoto: Dinkun Chen / CC BY-SA 4.0 規格の選び方で最も気をつけたいのが、真ん中の20Gbps、つまりUSB 3.2 Gen2x2だ。この規格は、パソコン側も同じGen2x2に対応していないと20Gbpsで動かない。そして、対応しているパソコンは思ったより少ない。 ...

2026年11月8日 · 1 分 · 116 文字 · kingsworksub-jpg

3-2-1バックアップをDTMに当てはめる。録った音はクラウドへ、サンプルは手元のHDDへ

曲のデータを失う場面は、思っているより地味にやってくる。作業用のSSDが突然認識されなくなる、ノートパソコンを落とす、上書き保存したあとで前の版のほうが良かったと気づく、間違えてプロジェクトのフォルダーごと消してしまう。どれも珍しい出来事ではなく、制作を何年か続けていれば一度は近いことが起きると思う。 そのたびに「バックアップを取っておけばよかった」と思うのだが、いざ始めようとすると、何を、どこに、どのくらいの頻度で置けばいいのかが分からなくなる。DTMのデータは量が多い。録音した音声、プロジェクトファイル、ソフト音源のライブラリ、プラグインの設定、書き出したミックス。全部を同じように扱うと、外付けドライブもクラウドの容量もすぐに足りなくなる。 この記事では、写真の世界から広まった「3-2-1ルール」という考え方を土台にして、作業用SSD・手元のHDD・クラウドの3か所に、制作データをどう分けて置くかを順に組み立てていく。 3-2-1ルールは、3つの複製・2種類の媒体・1つは家の外 2.5インチのHDDをケースに入れて、USB-Cでノートパソコンにつないだところ。手元のバックアップ先として最も手軽な形Photo: Augkun-ane / CC BY 4.0 3-2-1ルールは、写真家のピーター・クローが2000年代半ばに、デジタル写真の管理について書いた本の中で示した考え方として知られている。中身はとても短い。データは元の1つを含めて合わせて3つ持つ。そのうち少なくとも2つは、種類の違う保存先に置く。そして1つは、家とは別の場所に置く。この3つの数字だけだ。 数字にはそれぞれ理由がある。3つ持つのは、1つが壊れて復元している最中に、もう1つが壊れても残るようにするためだ。2種類の保存先に分けるのは、同じ型のドライブを同じ時期に買うと、同じような時期に同じような壊れ方をすることがあるからだ。家の外に1つ置くのは、火事や水漏れ、盗難、落雷のように、家の中のものがまとめて駄目になる出来事に備えるためだ。どれか1つの数字が欠けると、守れる場面がそのぶん減る。 最近はこれを発展させた「3-2-1-1-0」という言い方もある。後ろの「1」は書き換えられない形、あるいはパソコンから切り離した形で持つ複製を1つ、「0」は復元を試して誤りが0件であることを確かめる、という意味だ。個人の制作環境でここまで厳密にやる必要はないと思うが、考え方としては役に立つ。特に最後の「0」、つまり復元を確かめることは、あとの節でもう一度取り上げる。 失うと戻らないデータと、もう一度手に入るデータ 3-2-1ルールをそのまま全データに当てはめようとすると、DTMではすぐに行き詰まる。ソフト音源のライブラリだけで数百GBから1TBを超えることは珍しくなく、それを3つ、しかも1つはクラウドに置こうとすると、容量も時間も現実的ではなくなる。そこで最初にやるべきなのは、データを「失うと二度と戻らないもの」と「もう一度手に入るもの」に分けることだと思う。 失うと戻らないのは、自分で作ったものだ。録音した音声、プロジェクトファイル、打ち込みのデータ、自分で作ったプリセットやサンプル、書き出したミックスやマスター、歌詞やメモ。ここは世界に1つしかないので、3-2-1を厳密に守る対象になる。量は意外と少なく、ソフト音源の打ち込みが中心の人なら、何年分のプロジェクトを集めても数十GBに収まることが多い。生の録音が多い人でも、数百GB程度だろう。 もう一度手に入るのは、買ったものや配られたものだ。Native Accessで管理しているKontaktのライブラリのように、アカウントにログインすれば何度でもダウンロードし直せる音源は、最悪の場合でも時間をかければ戻ってくる。DAW本体やプラグインのインストーラーも同じだ。ここは手元のHDDに1つ複製があれば十分で、クラウドまで運ぶ必要はあまりない。ただし、販売が終わった音源や、今はもう配布していない無料のプラグイン、購入時のシリアル番号やライセンスファイルは別だ。これらは「もう手に入らないもの」の側に入れておく。 この線引きをしておくと、クラウドに上げる量がぐっと減り、毎月の費用も、最初のアップロードにかかる日数も現実的な範囲に収まる。 作業用SSDは1つ目の複製、置き場所ではなく作業場 2.5インチのSSD。読み書きが速く衝撃にも強いが、電源を切ったまま長く置く保管には向かないPhoto: PantheraLeo1359531 / CC BY 4.0 3つの複製のうち、1つ目はふだん作業しているドライブそのものだ。パソコン内蔵のSSDか、ソフト音源やプロジェクトを置くための外付けSSDがこれに当たる。SSDは読み込みが速いので、大きなサンプル音源を鳴らすときや、トラック数の多いプロジェクトを開くときに効く。制作の道具としてはとても優秀で、作業場はSSDにしておくのがいちばん快適だと思う。 ただ、作業用SSDはあくまで作業場であって、保管庫ではない。外付けSSDをもう1台買って、そこにコピーしてから引き出しにしまっておく、という使い方には少し注意がいる。SSDは電気を蓄えてデータを記録する仕組みなので、電源を入れないまま長く放っておくと、少しずつデータが抜けていく。半導体の業界団体が決めた家庭向けSSDの基準では、書き込みの寿命まで使い切った状態で、30℃の環境に電源なしで1年データを保てればよい、という水準になっている。温度が上がるとこの期間は短くなる。新品に近い状態ならもっと長く持つことが多いが、数年単位で電源を入れずに保管する用途は、基準のうえでも想定されていない。 一方で、作業用SSDの中身は毎日変わる。録音をして、編集をして、保存する。間違った操作も、そのまま上書きされる。だからこそ、2つ目と3つ目の複製は、作業場とは別の場所に、時間をさかのぼれる形で取っておく必要がある。 手元のHDDには、毎日の版を時間ごとに残す 20年以上前の4.3GBのHDD。HDDは磁気で記録するので、電源を切って保管しても中身が抜けにくいPhoto: Navaneethpp / CC0 2つ目の複製は、手元に置いた外付けのHDDにする。SSDと種類の違う保存先になるので、3-2-1の「2種類の媒体」もこれで満たせる。HDDは容量あたりの値段が安く、4TBや8TBのものでも手が届く。ソフト音源のライブラリとプロジェクトをまとめて置ける容量を、無理なく用意できるのが大きい。磁気で記録するので、電源を切った状態での保管にもSSDより向いている。 HDDが壊れやすいかというと、そこまで神経質になる必要はない。データセンターで数十万台のドライブを動かしている会社が毎年公表している数字では、2025年の1年間に壊れた割合は全体で1.36%ほどだった。100台に1台余りという割合だ。ただし、これは自分のHDDが壊れないという意味ではない。100台に1台は、いつか自分の番になってもおかしくない数字だ。だからこそ、HDD1台に頼り切らず、3つ目をクラウドに置く。 手元のHDDへのバックアップで大事なのは、ただコピーするのではなく、時間ごとの版を残すことだ。Windowsなら、コントロールパネルにある「ファイル履歴」が使える。外付けドライブを指定すると、標準では1時間ごとに変更されたファイルを保存し、古い版も残していく。保存の間隔は10分から1日まで選べる。対象はドキュメントやデスクトップなどのユーザーフォルダーが中心なので、別のドライブに置いたプロジェクトのフォルダーは、ライブラリに追加して対象に含める。Macなら「Time Machine」が同じ役割を果たし、過去24時間は1時間ごと、過去1か月は1日ごと、それより前は1週間ごとの版を、ドライブがいっぱいになるまで残していく。 自分でコピーの仕組みを作る人もいると思う。Windowsのrobocopyというコマンドで「/MIR」を付けると、元のフォルダーとまったく同じ状態をバックアップ先に作れる。便利だが、元のほうで消したファイルはバックアップ先でも消える。うっかり消したプロジェクトを、次のバックアップが律儀に消してしまうわけだ。この方式を使うなら、実行前に「/L」を付けて何が消えるかを確かめるか、日付ごとに別のフォルダーへコピーするなど、版を残す工夫を足しておきたい。 クラウドは同期ではなく、バックアップのサービスを選ぶ Backblazeが自社で設計したストレージ用の筐体。ドライブを差す前の状態で、ここに数十台のHDDが並ぶPhoto: ChrisDag / CC BY 2.0 3つ目の複製は家の外、つまりクラウドに置く。ここでいちばん気をつけたいのは、同期のサービスとバックアップのサービスは別物だということだ。DropboxやGoogle ドライブ、OneDriveは、パソコンのフォルダーとクラウドの中身を同じ状態に保つための仕組みだ。手元でファイルを消せばクラウドでも消え、手元のファイルが壊れればクラウドにも壊れたものが届く。身代金を要求するウイルスにファイルを暗号化されたときも、暗号化されたファイルがそのまま同期されてしまう。各サービスに過去の版を戻す機能はあるが、何千個ものファイルを一つずつ戻すのは現実的ではない。 バックアップのサービスは、手元の変化をクラウドに追いかけさせつつ、過去の版を一定期間取っておく。たとえばBackblazeの個人向けバックアップは、パソコン1台につき容量の上限なしで、料金は月9ドル、年払いなら99ドルだ。つないでいる外付けドライブも対象にできる。ただし、外付けドライブは30日以上つながなかった場合、そのドライブのバックアップが消されてしまう。過去の版は標準で30日分残り、追加料金を払えば1年分に延ばせる。 前の節の線引きがここで効いてくる。クラウドに上げるのは、失うと戻らないもの、つまり録音とプロジェクトと自作のデータだけでよい。家庭の回線で1TBを上げようとすると数日から数週間かかることもあるが、数十GBなら一晩で終わる。料金が容量で決まるサービスを選んだ場合も、費用を小さく抑えられる。 1曲を1つのフォルダーにまとめてから預ける バックアップを取っていても、復元したプロジェクトを開いたら音が鳴らない、ということがある。プロジェクトが参照しているサンプルや録音が、プロジェクトのフォルダーの外、たとえばダウンロードフォルダーやデスクトップに散らばっていて、そこはバックアップの対象に入っていなかった、という場合だ。これを防ぐには、1曲に必要なファイルを1つのフォルダーに集めてからバックアップに回すのがいちばん確実だ。 主なDAWには、そのための機能が用意されている。Ableton Liveなら、ファイルメニューの「すべてを集めて保存」で、プロジェクトが使っている外部のサンプルをプロジェクトのフォルダーにコピーできる。Logic Proは、別名で保存するときにパッケージ形式を選び、音声ファイルをプロジェクトにコピーする設定にしておけば、1つのファイルの中に必要な素材がまとまる。Cubaseにはファイルメニューに「プロジェクトのバックアップ」があり、使っている音声を集めた複製を別の場所に作れる。FL Studioは、書き出しのメニューにある「プロジェクトデータファイル」で、プロジェクトと使っているサンプルを1つのZIPファイルにまとめられる。 私は、曲が一段落したとき、たとえばミックスを書き出した日に、この「まとめて保存」をする習慣にしている。毎回やる必要はないが、区切りでやっておけば、その時点の曲は確実に1つのフォルダーで完結する。ソフト音源の音色そのものはライブラリから読み込まれるので、念のため使った音源とバージョンの名前を、曲のフォルダーにテキストで書き残しておくと、何年か後に開くときに助かる。 月に一度、1曲だけ復元してみる バックアップは、取っているだけでは半分しか終わっていない。3-2-1-1-0の最後の「0」が言うとおり、戻せることを確かめて初めて役に立つ。設定を間違えて肝心のフォルダーが対象から外れていた、外付けドライブがいつの間にか一杯になって止まっていた、クラウドの最初のアップロードが途中で止まったままだった。どれも、復元しようとした日に初めて気づくことが多い。 確かめ方は簡単でいい。月に一度、カレンダーに予定を入れて、手元のHDDから1曲、クラウドから1曲を、作業用とは別のフォルダーに戻す。戻したプロジェクトをDAWで開き、すべてのトラックが鳴ること、録音した音声が欠けていないことを確かめる。ついでに、HDDの空き容量とクラウドの最終バックアップ日時も見ておく。10分もかからない作業だが、これを続けていれば、いざというときに慌てずに済む。 ...

2026年10月26日 · 1 分 · 73 文字 · kingsworksub-jpg

ノートPC1台でDTMを続けるなら、据え置きから持ち出すのは4つだけ

机の上にスピーカーとディスプレイを並べ、足元に大きな鍵盤を置いた据え置きの制作環境は、座ればすぐに作業に入れる。その代わり、そこから一歩も動けない。引っ越しを控えている、実家と自宅を行き来する、昼休みや移動中にも少し手を動かしたい。そういう事情が重なると、いっそノートPC1台にまとめてしまいたくなる。 ただ、据え置きの機材をそのままかばんに詰めることはできない。ノートPCにまとめるというのは、何を持ち出し、何を家に置いていくかを決め直す作業だと思う。この記事では、ノートPC本体の選び方から始めて、持ち出す周辺機器を「オーディオインターフェース・鍵盤・ヘッドホン・外付けSSD」の4つに絞る考え方、電源とノイズの扱い、そして削ったものを家でどう補うかまでを順番に整理する。 基準は「かばんから出して5分で音が出るか」 椅子に置いたノートPCと、ケースの上のパッドコントローラーだけで組んだライブ用の環境。持ち運ぶ機材はこのくらいまで絞れるPhoto: kenji ross / CC BY 2.0 持ち出すかどうかを決めるときの基準は、一つに絞っておくと迷わない。おすすめしたいのは「かばんから出して、5分以内に音が出せるか」という基準だ。机に着いてから電源アダプターを探し、ケーブルを何本もつなぎ、ドライバの設定を確かめているうちに、作りたかったフレーズは消えてしまう。据え置き環境の強みは、電源もケーブルもつなぎっぱなしにできることだった。持ち運ぶ環境では、その手間を毎回ゼロから払うことになる。 この基準で見ると、残せる機材の条件ははっきりしている。一つ目は、USBの電力だけで動くこと。専用の電源アダプターが要る機材は、コンセントの位置に縛られるうえ、かばんの中でもかさばる。二つ目は、ケーブル1本でノートPCとつながること。三つ目は、かばんの中で潰れない大きさと丈夫さを持っていることだ。 この三つを満たすものを数えていくと、残るのはだいたい4つになる。音を出し入れするオーディオインターフェース、音程を弾くための小さな鍵盤、音を確かめるヘッドホン、そしてサンプル音源やプロジェクトを入れておく外付けSSDだ。逆に、モニタースピーカー、61鍵や88鍵の鍵盤、2枚目のディスプレイ、アウトボードのエフェクターは、この基準から外れる。外れたものは手放すのではなく、家に置いておく機材として役割を変える。最後の節でその分け方を改めて扱う。 ノートPCは、CPUより先にメモリとストレージで選ぶ ノートPCを選ぶとき、まず目が行くのはCPUの世代や型番だと思う。ただ、DTMで後から困りやすいのはCPUよりメモリとストレージのほうだ。ノートPCの多くは、メモリが基板に直付けされていて、買ったあとに増やせない。現行のMacBookはすべてこの形で、Windowsのノートでも薄型の機種ほど増設できないものが多い。だから、メモリは最初に決めて、余裕を持たせておく必要がある。 Ableton Live 12は最低8GBのメモリで動くとされているが、これは本当に最低限の数字だ。ピアノやドラムのサンプル音源を何本も立ち上げると、8GBでは音源の読み込みが追いつかず、再生中に音が途切れやすくなる。打ち込み中心で、サンプル音源を重ねて使うなら16GBが下限で、オーケストラ系の大きな音源を何本も並べるなら32GBあると安心できる。現行のMacBookはAirもProも16GBから選べるので、Macなら16GBか、予算が許せば24GB以上を選んでおくと長く使える。 ストレージは、内蔵SSDを512GBか1TBにしておき、大きなサンプル音源は後で触れる外付けSSDに逃がす、という分け方が現実的だと思う。内蔵SSDの容量を増やすと価格が大きく上がるのに対して、外付けSSDは容量あたりの値段がずっと安い。OS、DAW本体、プラグイン、作業中のプロジェクトが入れば、内蔵側はそれで足りる。 もう一つ気にしておきたいのが熱だ。ノートPCは、長時間重い処理を続けると、本体の温度を下げるためにCPUの動作速度を自分で落とす。ファンのない薄型の機種は、短い作業なら軽快でも、ミックスで何十トラックも鳴らし続けると速度が落ち、音切れが出やすくなる。逆に、ゲーム向けの高性能なノートはファンの音が大きく、マイクで録るときに邪魔になる。どちらを選ぶにしても、長い作業では本体の下に隙間を作って熱を逃がし、バッファを据え置きのときより一段大きめにしておくと安定しやすい。 オーディオインターフェースは、バスパワーの2入力で足りる Focusrite Scarlett Solo(写真は第3世代)。USBの電力だけで動き、マイクとギターを1本ずつ挿せるPhoto: Peter Placzek / CC BY-SA 4.0 ノートPCのヘッドホン端子と内蔵マイクだけでも、打ち込みはできる。ただ、本体の音声回路はDAWで使うには遅延が大きく、鍵盤を弾いてから音が鳴るまでにずれを感じやすい。とくにWindowsでは、本体の音声回路にDAW向けの低遅延なドライバが用意されていないことが多い。持ち出す4つの中で、最初に残すべきなのはオーディオインターフェースだと思う。 選ぶ条件は、先に挙げた基準どおりUSBの電力だけで動くこと、つまりバスパワーで動くことだ。Focusrite Scarlett Solo と Scarlett 2i2 の第4世代、MOTU M2、Universal Audio Volt 1 や Volt 2 などは、どれもUSB-Cケーブル1本でノートPCとつながり、電源アダプターなしで動く。入力の数は2つあれば十分で、歌とギターを1本ずつ、あるいはシンセのステレオ出力をそのまま録れる。据え置きで使っていた8入力以上の大きなインターフェースは、ドラムを録るような場面でもない限り、持ち出す理由がない。2台目として家に残しておけばよい。Scarlett 2i2の細かな使い勝手は、Focusrite Scarlett 2i2(4th Gen)を一台だけ、とことん検分するにまとめてある。 つなぎ方にも一つ決まりを作っておきたい。インターフェースは、USBハブや変換アダプターを通さず、ノートPC本体のポートに直接挿す。ハブを通すと、同じハブにつないだ外付けSSDやマウスと電力や通信を分け合うことになり、音切れの原因を探すときに疑う場所が増える。ポートの少ないノートPCでは、インターフェースを本体に直接、それ以外をハブに、という順番で割り振る。 バッファの大きさは、作業ごとに切り替える。歌や楽器を録るときは64〜128サンプルにして、弾いた音と聴こえる音のずれを小さくする。録り終えてミックスに移ったら、512〜1024サンプルに上げて処理の余裕を作る。ノートPCは据え置きのPCより処理の余裕が小さいので、この切り替えを習慣にしておくと、音切れの多くを避けられる。 鍵盤は25鍵、パッドとつまみがあれば片付く AKAIのLPK25(上)とLPD8(下)。どちらもノートPCと並べて使う前提で作られた、薄くて軽いコントローラーPhoto: Ryuichi IKEDA / CC BY 2.0 据え置きの61鍵や88鍵は、両手で和音を弾けるのが魅力だが、かばんには入らない。持ち出す鍵盤は25鍵、つまり2オクターブに割り切る。オクターブを上下に切り替えるボタンがあれば、ベースの低い音から高音の飾りまで一つの鍵盤で弾ける。両手で弾く広い和音は難しくなるが、片手でメロディやベースを入れ、コードは右手だけで押さえて後から打ち込みで直す、という流れに変えれば困ることは少ない。 いま選ぶなら、Akai MPK Mini MK4 と Novation Launchkey Mini MK4 の25鍵が候補になる。どちらもUSB-Cの電力だけで動き、鍵盤のほかにドラムを叩けるパッドと、音色やミキサーを動かせるつまみを備えている。MPK Mini MK4はパッドが8つで、音を鳴らす鍵盤として素直に使える。Launchkey Mini MK4はパッドが16あり、Ableton LiveやLogic Proなど主要なDAWの操作に合わせた設定が最初から用意されている。DAWの画面をマウスで触る回数を減らしたいならLaunchkey、とにかく軽く小さくまとめたいならMPKという分け方でよいと思う。MPK Mini MK4については、Akai MPK Mini MK4の25鍵でできること、上位機に任せることで詳しく扱った。 ...

2026年10月23日 · 1 分 · 157 文字 · kingsworksub-jpg