NovationのLaunchkeyがMK4になったのは2024年の夏で、そのときに出たのはMini 25、Mini 37、25、37、49、61の6機種だった。残りの一枠、88鍵が加わったのが2026年7月で、これで7機種が横一列に並んだことになる。
面白いのは、並べてみても中身の差がほとんど無いことだ。16個のパッドも、OLEDディスプレイも、スケールモードもコードモードも、アルペジエーターも、DAWとの連携も、Mini 25から88まで同じものが入っている。つまり「どの機能が欲しいか」で機種を絞ることができない。残っているのは鍵数と、それにくっついてくる横幅と重さと鍵盤のタッチ、それだけである。選択肢がきれいに一本の軸に整理されているとも言えるし、肝心なところを自分で決めろと突き放されているとも言える。
7機種で変わらない中身 ノートPCとシンセの間に差し込まれたLaunchkey Mini(写真は旧世代)。鍵盤の上に並ぶパッドという構成はMK4にも引き継がれている。Photo: Pete Brown from Gambrills, MD, USA / CC BY 2.0 共通部分から見ていく。まずパッドが16個。4×4で並んでいて、ベロシティに加えてポリフォニックアフタータッチに対応する。押したあとの圧力をパッドごとに別々に送れるので、和音を押さえたまま一音だけ揺らす、といった使い方ができる。この価格帯でパッドにポリアフターが載っているのは珍しく、MK4のいちばんの売りだと思う。
その上に8個のエンコーダーが並ぶ。止まらずに回り続けるタイプで、2バンク切り替えなので実質16個ぶんのパラメーターに手が届く。真ん中にはOLEDディスプレイがあって、いま何をいじっているのか、どのコードが鳴っているのかが出る。小さい画面なので離れた場所からは読みづらいが、プラグインの画面を見るために手を止める回数は確実に減った。
機能面ではスケールモードとコードモードが中心になる。スケールモードは選んだキー以外の音を弾けなくするもので、鍵盤が苦手な人ほど効く。コードモードは、一本指で和音を鳴らす固定コード、鍵盤上にコード進行を並べるコードマップ、自分で組んだ和音を割り当てるユーザーコードの三本立てで、特にコードマップは手癖から外れた進行が出てくるので、作りかけの曲が煮詰まったときに触っている。アルペジエーターもリズムや音の間引き方を細かく指定できるタイプで、適当に回しているだけで使えるフレーズが落ちてくる。
DAW連携はAbleton Liveがいちばん深く、クリップの起動からミキサー操作までコントローラー側で完結する。Logic、Cubase、FL Studio、Reasonにもスクリプトが用意されていて、Componentsというアプリからカスタムモードを作れば他の環境にも合わせられる。Native InstrumentsのNKSにも対応しているので、対応プラグインならつまみの割り当てが最初から入っている。
差がつくのは周辺のほうだ。Miniの2機種にはフェーダーが無く、MIDI出力は3.5mmのTRS、ピッチとモジュレーションはホイールではなくタッチストリップになる。フルサイズ鍵盤の5機種には9本のフェーダーとボタンが付き、MIDI出力は5ピンのDIN、サステインペダルは6.3mmのジャックになる。49鍵以上はさらにエクスプレッションペダルも挿せる。25鍵のモデルにフェーダーが9本も載っているのは今どき珍しく、ここはありがたい。
残念な点も書いておくと、鍵盤側にはアフタータッチが無い。パッドにはポリアフターが載っているのに、鍵盤を押し込んでも何も起きない。鍵盤でアフタータッチを使いたいなら、同じくらいの価格帯ならKorg Keystage、予算を倍にできるならNative InstrumentsのKontrol S系を見ることになる。電源スイッチが無いのも地味に不便で、PCを落としてもパッドが光りっぱなしになる。Shiftとセッティングボタンの長押しでLEDを消すスタンバイに入れられるが、スイッチを一つ付けてくれればそれで済んだ話ではある。
鍵盤のタッチは3種類に分かれる Novationのコントローラーの鍵盤まわり(写真は25 SL MkII)。鍵の長さや奥行きは見た目以上に弾き心地を左右する。Photo: Filori / CC BY-SA 4.0 鍵数を選ぶというのは、実は鍵盤そのものを選ぶことでもある。MK4の7機種は、鍵盤のタッチで3つのグループに分かれているからだ。
いちばん軽いのがMini 25とMini 37で、幅の狭いミニ鍵盤になる。指を広げる距離が短いので和音は押さえやすいが、黒鍵の間隔が狭いぶん、鍵盤に慣れている人ほど最初は空振りする。次が25と37で、こちらは幅がフルサイズになるものの、動きはシンセアクション、つまり軽くて戻りの速いタイプだ。打ち込みの入力装置としては申し分ないが、ピアノのつもりで弾くと指が沈みすぎる。
49、61、88の3機種は、セミウェイテッドのウォーターフォール鍵盤になる。重りが入っているぶん押し込みに手応えがあって、強弱の中間が出しやすい。ウォーターフォールというのは鍵の先端が丸く落ちている形で、鍵盤を押さえながら指を滑らせるような弾き方をしても引っかからない。88鍵だけは専用に設計された鍵盤で、よりピアノに近い返りになっているとされる。ただし、どれもハンマーアクションではない。グランドピアノの重さを期待して買うと、88鍵でも「軽い」と感じるはずだ。
ここが鍵数選びでいちばん見落とされる点だと思う。37鍵と49鍵の違いは「1オクターブぶん広い」ことではなく、「別の弾き心地の楽器に乗り換える」ことになる。鍵盤を弾いて入力したい人は、鍵数の希望が37で足りていたとしても、タッチを理由に49鍵を選ぶ価値がある。
机の幅という現実 鍵盤が増えると机では収まらなくなり、スタンドと二段重ねの世界に入っていく。Photo: George P. Macklin / CC BY-SA 2.0 カタログで最初に見るべきなのは鍵数ではなく横幅だと思っている。MK4の横幅は、Mini 25が338.5mm、25が461mm、37が557mm、49が730mm、61が895mm、88が1274mm。奥行きはどれも250〜265mm前後、高さは80〜95mm前後で揃っている。重さはMini 25が0.82kg、25が1.8kg、37が2.18kg、49が4.08kg、61が4.78kg、88が8.04kgだ。
これを机の寸法に当ててみる。幅120cmの机に27インチのモニターを1枚置くと、モニターの脚まわりでだいたい60cm強が埋まる。残りは55cm前後で、横に並べて置けるのは37鍵まで。49鍵の730mmはモニターの手前、キーボードとマウスの代わりに置く形になり、これが宅録で49鍵が定番になっている理由だと思う。61鍵の895mmは120cmの机をほぼ埋めてしまうので、PCのキーボードを膝の上か引き出しに逃がす覚悟がいる。
88鍵の1274mmは、もう机に載せるものではない。別のスタンドを用意して机の手前か横に置くか、二段式のスタンドで机の下から迫り上げるか、どちらかになる。ただ8.04kgという重さは88鍵としてはかなり軽い部類で、ハンマーアクションの88鍵が15kg前後あることを考えると、安いXスタンドでも足りるし、ライブに持ち出すのも現実的な範囲に収まる。重さと幅のどちらが問題になるかは人によるが、この機種に関しては確実に幅のほうが問題になる。
25鍵と37鍵でできること 2オクターブしかない25鍵は、鍵盤を弾く道具というよりコントローラーだと割り切ったほうがいい。ドラムの打ち込み、キースイッチの操作、片手でのメロディのスケッチ、この三つは不自由なくこなせる。左手でベース、右手でコード、といった使い方になると途端にオクターブボタンを連打することになるので、そこは諦めることになる。
それでもMK4の25鍵はよくできていると思う。461mmという横幅にフェーダーを9本詰め込んでいて、ミキサーのつまみ代わりに使える。Miniのほうは338.5mm・0.82kgとさらに小さく、バスパワーで動くのでノートPCとセットでカバンに入る。フェーダーは無いが、持ち出す前提ならそこは割り切るところだろう。
37鍵は3オクターブで、ここから「鍵盤らしさ」が出てくる。簡単なコード進行なら左右の手を同時に置けるし、オクターブの切り替え回数がはっきり減る。557mmという幅はモニターの手前に置ける最大寸法に近く、机の狭さと弾きやすさの折り合いをつけたいならここが候補になる。Miniの37鍵もあるので、幅をもう10cm削りたいならそちらという選択もある。
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